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[vsnet-j 2680] Historical document: GRB



Historical document: GRB

 その昔、某所で紹介した文書ですが、今となっては新しい人はほとんど読めない
 ようなところに行ってしまっていると思われますので、文書が見つかったところ
 でその都度紹介していきたいと思います。内容は古いものも多いので、その点は
 考慮して読んでください。一部当時関係した人名が出てくるところもありますが、
 ご了承ください。

#これは某所にて、高橋さんが「1941年の閃光現象」の記録を紹介されて、その
#解釈の可能性としてガンマ線バーストも関係あるかも、という話になったもの
#に対するコメントでした。こんな時期からGRBで縁があったのか(^^;

(1992/12/19)

 ガンマ線バーストについてですが、これまでガンマ線バーストの起こった領域の
過去の写真を調査して、誤差範囲内に星像を検出したという報告がいくつかありま
すが、いずれも写真のスペックと区別が困難で、現在までの所ガンマ線バーストは
可視光での同定に成功していないと言ってほぼ間違いはないでしょう。
 それゆえガンマ線バーストが光でどのように見えるのかは、誰も知らないと言っ
てよいと思います。この分野にあまり詳しくはありませんが、多分ガンマ線とX線
以外では検出すらなされていないのではないでしょうか。ガンマ線とX線で同時に
観測された時のエネルギー分布では、圧倒的にガンマ線領域のエネルギーが強く(
それゆえにガンマ線バーストなのでしょうが)、X線より長い波長には輻射があま
り伸びていないのではないかという推論もあります。例えば同じようにガンマ線が
圧倒的に強い天体としては、最近同定されたゲミンガ(Geminga)がありますが、この
場合は可視光ではとても暗い天体です。もしガンマ線バーストの対応天体がゲミン
ガのようなものであれば、肉眼で停止流星のように輝いて見えることはないかも知
れません。
 もっとも、ガンマ線バースターの正体はまだ解明されていませんから、明かに中
性子星であるゲミンガからの類推は正しくないかも知れません。
 もし、ガンマ線のエネルギーと同じぐらいのエネルギーが可視光でも輻射されて
いれば肉眼でも見える光度になるはずなので、今の所完全に否定できないという見
解が精いっぱいだろうと思います。

 ガンマ線バーストと流星現象との同定は、(あまり良くは知りませんが)一時期
かなり組織的に行われたようですが、現在はGRO衛星のように精密な観測が行え
るようになったため、以前に比べてはるかに効率よく同時観測ができると思います。
組織的な観測はなくても、研究者はあるいは何らかの偶然で同定されるのを待って
いる所でしょう。ガンマ線バースト源の位置カタログも発表されるそうですので、
調査してみられると大発見があるかも知れません。ポイントは2カ所以上の離れた
点で独立の観測があって、いずれの場所でも停止流星に見えたということでしょう。

 話題はガンマ線バーストになってしまいましたが、高橋さんの天体は完全にガン
マ線バーストを否定することはできない(継続時間は長い方のバーストを考えると
おかしくはない)ですが、可能性は低いのではないかと思われます。また1941
年ということで積極的にガンマ線バーストと同定できる資料はないと思われます。
(もっとも、宇宙線の観測にはひっかかっているかも知れません)
 ただし、ガンマ線バーストが同じ天体に繰り返して起きるようなことがあれば、
将来同定されることがあるかも知れません。

 またフレアスターとしては、やはり明る過ぎます。一番明るくなったフレアスタ
ーで UV Cetの6.8等ですから、それよりもけた違いに近い天体でなくてはいけませ
ん。

 ということで、やはり停止流星が一番可能性が高いと考えられます。


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