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[vsnet-j 2681] Historical document: GRO J0422+32



Historical document: GRO J0422+32

 その昔、某所で紹介した文書ですが、今となっては新しい人はほとんど読めない
 ようなところに行ってしまっていると思われますので、文書が見つかったところ
 でその都度紹介していきたいと思います。内容は古いものも多いので、その点は
 考慮して読んでください。一部当時関係した人名が出てくるところもありますが、
 ご了承ください。

# GRO J0422+32 スーパーハンプ発見のころの話

(1992/12/21)

(前略)
 このファイルの内容は、ここでも近々紹介しようと思いますが、例のX線新星の
GRO J0422+32 に周期5.2時間のスーパーハンプが検出されたというもので、こ
の後も変動を追跡していただけるように変光星観測者の方に一足早く生データを発
送したものです。ついでに概況を書いておきますと、GRO J0422+32 に周期的な変
化が認められるという報告は Chevalier and Ilovaisky (IAUC 5644) にあります
が、変光範囲は 0.04等と小さなものでした。それがどうも11月あたりから変動
幅が大きくなってきたようで(周期も少し違います)、この2日では振幅が 0.2等
にも達しています。これはSU UMa型と同じくスーパーハンプの成長を見ているのだ
と思います。ここからは少しややこしいのですが、簡単に言えばSU UMa型とSS Cyg
型を区別しているものは何か、という問題になります。軌道周期5時間のSS Cyg型
では当然のことながらスーパーハンプは観測されません。X線新星は何か違うので
す。SU UMa型のスーパーハンプをもたらすメカニズムとしては、最近潮汐不安定理
論というのが大変有望視されています。これによれば伴星による潮汐力によって降
着円盤が変形を受け、(細かい過程はう〜んとすっとばして)その変形がスーパー
ハンプとして観測されるというものです。そしてその変形が生じる理論的限界とい
うものがあって、それは質量比=主星の質量/伴星の質量がある値(4とも3とも
言われます)によって決まるというわけです。そして激変星の場合主星は白色矮星
ですから、質量に上限(1.4太陽質量)があり、スーパーハンプ現象を起こすた
めの伴星の質量に上限が存在するということになります。普通の星(主系列星)の
場合は質量と半径に関係があり、また激変星の場合伴星はロッシュローブを満たし
ていると考えられていますから、ある軌道周期よりも長い所ではこの制限を満たす
ことができなくなります。そしてその境界がまさにSU UMa型とSS Cyg型を区分けす
るものであると考えられています。
 つまり、長い周期のスーパーハンプが見られるということは、「主星が重い」と
いうことの証拠になります。簡単な計算によれば5.2時間周期のスーパーハンプ
が見られるためには、主星の質量は2.2太陽質量よりも大きくなくてはいけない。
つまり「典型的な」中性子星の質量を越えているということになります。もっと周
期が長ければ、いわゆる中性子星の質量上限である3太陽質量を越えて、ブラック
ホールだろうと言えるわけですが、こればかりは星の都合ですから何ともなりませ
ん。でも少なくともブラックホールの尻尾までは行ったと思います。今後平常光度
に戻ってから詳しい観測が行われて真の軌道周期や視線速度が得られ、ブラックホ
ールであることが確認されることと思います。(後略)


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