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[vsnet-j 2658] Historical document: FG Ser



Historical document: FG Ser

 その昔、某所で紹介した文書ですが、今となっては新しい人はほとんど読めない
 ようなところに行ってしまっていると思われますので、文書が見つかったところ
 でその都度紹介していきたいと思います。内容は古いものも多いので、その点は
 考慮して読んでください。一部当時関係した人名が出てくるところもありますが、
 ご了承ください。

(1992/07/14)

論文紹介:食のある共生星型新星(NC+E): FG Ser(=AS296)

 "The Ongoing Outburst of the Eclipsing Symbiotic Nova AS296:
       The First 1200 Days"
  U.Munari, P.A.Whitelock, A.C.Gilmore, C.Blanco, G.Massone and P.Schmeer
  Astron. J. 104, 262 (1992)

 FG Serというと日変研の観測データベースでも、名前のよく似た特殊星で
あるFG Sgeとよく間違って観測され、なにかとよく問題の起きる星で、観測
の困難さに伴うと思われる「不可解なデータのばらつき」を示すこととともに、日
変研の事務局泣かせの星であった。
 このような困ったこの星の性格を裏付けるように、名前と同定というごく基礎的
なことでも最初から混乱を来たし、もともとAS296という、輝線天体のカタロ
グに記載されていて共生星であることが判明している星と、すでに古くから半規則
型変光星として知られていたFG Serが同一の天体であることが明かになった
のはごく最近のことである。この原因はなによりも、GCVSに発表された位置が
たいへん大きな誤差を含んでいたためで、発見の原論文と現在の写真を比較してみ
ないことには、誰もその同一性に気がつかなかったということによる。

 しかしながら、共生星としてはなかなか素性のよく知れた星で、まだよくわかっ
ていない共生星の実態の解明に重要な役割を果たしている。

 さて共生星とは何か、という問題があるが、これは英語名では symbiotic star
と言い、parasitic starではないところが、麗しい相利共生の世界なのである。

 現在ではこれは、

 「晩期巨星(late type giant; LTG)と高温小天体(hot compact object; HCC)
  からなる近接連星である」

 と考えられている。この相互作用によって星雲が形成され、高温小天体からの光
によって電離された星雲が、あたかも惑星状星雲のような輝線を出し、共生星がス
ペクトル上で示す大きな3つの特徴:赤色星・高温星・禁制線 がすべてこれで説
明できると考えられている。特に赤色星と高温星との相互作用が小さい場合には、
惑星状星雲に近いものになることは十分納得できることである。

 また共生星の多くは、アウトバースト(outburst)と呼ばれる爆発的な光度上昇を
伴う。これもメカニズムがよくわかっておらず、いつも論争の的となっているとと
もに、変光星観測者の間にも「なんとなくごちゃごちゃしている」という印象を与
え、理屈が通らないと観測に取り掛かれない(そうでない連中もいるみたいだが)
と一般に評される物理好きの変光星屋を遠ざける原因にもなっていたようだ。

 アウトバーストの原因の有力な説としては
 1)新星爆発:高温天体が白色矮星の場合、通常の新星と同じように表面で熱核
   反応の暴走が起こる。
 2)降着率の急激な変化。例えば伴星からの急激な質量放出があって、それが高温
   星に降り積もる。あるいは、降着円盤を形成していて矮新星のように降着円盤
   の不安定性によってアウトバーストが起こる。
 がある。しかしその判別は通常の新星や矮新星の時の場合のようには、明かなもの
ではなかった。その一つには共生星のアウトバーストでは新星ほど顕著なスペクトル
変化が見られないため、物質の放出の証拠がはっきりしないこと、また爆発前の状態
がよく知られておらず、白色矮星かそうでないかも不明のことが多かったためである。

 しかし、このFG Serは、同じく共生星の新星であるAS338とともに、爆
発前から多数のスペクトル観測が行われ、またIUE天文衛星によって、爆発前に紫
外線の観測がなされ、高温天体が白色矮星以外では有り得ないことが証明されている
ということで、爆発の機構に大きな制限を付けることとなった。またもう一つ幸運で
あったのは、この系が食連星であったことで、爆発中の高温天体の形状を調べること
ができたということにある。この食の形状の解釈(定量性のある論議をしていないの
で解析とは言わせないぞ)によって爆発中の高温源の構造は、降着円盤というより、
むしろ白色矮星よりもかなり拡大した「擬光球」を持つ、いわゆる新星型の形状を呈
していたことが示されている。


 さて、この星は1988年6月に史上初めてのアウトバーストを起こし、日変研で
も、あらゆる共生星の光度曲線を見事に描き出すことでは世界に類をみないとも言わ
れる「共生星の奇才」、あれっ字が違ったかな、、三重県のH氏によって、アウトバ
ーストを起こす前から観測が行われており、わずかな欠測のうちに増光してしまった
AS296(そのころはそう呼んでいました)に、付き合いの悪いやっちゃとひどく
残念な様子であったことは、「変光星」誌上にも独特のタッチで雄弁に語られていま
す。彼はあらゆる星のアウトバーストを起こす前の観測はたくさん持っている、世界
的にも貴重な人です。
 ちなみに、観測を常時さぼっているわたくしは(多分この星は1回ぐらいしか見た
ことがない)残念とも何とも感じませんでしたハイ。(カワセミを見逃した時は残念
がっていたとか、内緒よ)

 この調子ではいつまで経っても、意味のある情報が出てきそうにありませんネ。研
究室での論文紹介でもそうですが、内容をよく把握せずに紹介すると、前置き(別名
をイントルダクションとも言いますが)ばかり長くなって困ったものです。
 さてさて、光電測光・P.Schmeerの眼視観測を中心とした光度曲線をみると、この
星はJD2447400ごろに第1回目の極大(V=9.8)を迎えた後、1年ぐらいで比較的速く減
光を始め、300日後には11等台後半になってしまいました。このあたりから観測
を始めた人は、増光がすでに終結しつつあると思って観測を中止してしまった人が多
いようです。しかし、JD2447800ごろに第2回目のアウトバーストを起こし、再度10
等まで復帰したのです。しかもそこで急激に12等以下まで減光をしました。その際
に行われた各種観測から、伴星のM型星のみが見えていることが明かになり、食であ
ることが確認されました。食は100日強続き、また10等に復光しました。その後
11等まで減光して、400日ほど、ほとんど減光しない期間が続きました。
 そうしているうちに、JD2448440ごろから第2回目の食。これについては「変光星」
No.151にも光度曲線が出ており、再度12.5等程度まで暗くなりました。
次は1993年、忘れずに観測しましょう。

 食の要素式は: JD.Min = 2448492   +   650 E
                             (±4)    (±10)
 この星のアウトバーストが新星現象であると推定された理由には、
 1)爆発前の中心星が白色矮星であったことが確認されている
 2)食の形態から隠される天体は降着円盤よりも、数太陽直径程度の星らしい
 というものです。しかしその他の特徴はあまり通常の新星に似ていません。例え
ばスペクトルには質量放出を裏付ける P Cyg プロフィールが見られないこと。爆発
後の赤外観測で放出物質による増光を示さなかったことが挙げられます。もしこの
星のアウトバーストが通常の新星爆発のように熱核反応の暴走であったならば(そう
でなくても)質量放出を伴わないということは、たいへん興味あることです。なぜ
ならばIa型超新星は連星の中で成長した白色矮星の質量がチャントラセカールの
限界を越えてしまうことに起因するという説が有力であるにもかかわらず、通常の
連星中の白色矮星(いわゆる激変星です)では、白色矮星はガスがたまると新星爆
発を起こして質量放出をしてしまうので、なかなか成長できないという問題点があ
ったのです。この点から考えると共生星の新星はIa型超新星の前段階の有力な候
補天体の可能性があります。
(長いわりには、たいしたことは書かなかったな)


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