Historical document: GK Per outburst in 1992 その昔、某所で紹介した文書ですが、今となっては新しい人はほとんど読めない ようなところに行ってしまっていると思われますので、文書が見つかったところ でその都度紹介していきたいと思います。内容は古いものも多いので、その点は 考慮して読んでください。一部当時関係した人名が出てくるところもありますが、 ご了承ください。 (1992/07/08) その後、直前のデータも入って、増光途中であることは確かなようです。この後2〜 3週間は楽しめそうです。 光度情報(#228のものを一部含む) 1992 June 19.029, 13.1 (Gary Poyner, Birmingham) 29.043, 13.2 (Patrick Schmeer, Germany) July 3.31, 12.3 (John Bortle, USA) 4.38, 12.3 (M.Adams, USA) 5.38, 12.1 (Adams) 6.38, 11.8 (Adams) 7.031, 11.8 (Bill Worraker, Didcot,0.26-m refl.) (ref: THE ASTRONOMER Electronic Circular No 651 1992 July 7 20.06UT) さて、お待ちかねこの星の過去の変光ですが、1901-1982の光度変化については Sabbadin and Bianchini (1983) がまとめており、これに1983年のアウトバースト を加えて Bianchini et al. (1986) が解析しています。 これらによると、GK Perの爆発後の変光は以下のようにまとめられそうです。 1)1916年、極小光度mv=15等に達した。(これは連星を形成する星本体のみの光度 に近いものであろう。現在の静穏時の光度は約13等なので、星本体に比べて現在 の降着円盤がいかに明るいものかわかる) 2)1920-1930年代には、14.2-12.0等の範囲を典型的な周期として40,80,400日で ふらついていた。この期間系の光度は次第に上昇、1940年代には13等を下ること はほとんどなくなった。(渡辺さん、VSOLJのデータは出てきますか?) 3)1948年以降、非常にゆっくりと減光。矮新星型の増光を示し始めた 4)増光間隔は400±40日の倍数で起きているらしい。 5)その他に、7-8年周期のゆっくりした変動があるように見える。 増光の分類 矮新星、例えば SS Cygと同じように、アウトバーストにはいくつかの種類がある ようです。SS Cygの場合にはアウトバーストの継続時間は変化するものの、最大光度 はさほど変化しないのに比べ、GK Perでは最大光度がかなり変化することが特徴的で す。果たして今回のはどの分類に属するでしょう?(分類型はBianchini et al.1986 による) 1)small(S)型 : 増光振幅 1.0等 例)1973, 1978 2)medium(M)型: 増光振幅 2.0等 例)1946, 1966, 1970 3)large(L)型 : 増光振幅 3.0等 例)1975, 1981 4)wide(W)型 : 増光振幅 1.0等、極大継続時間は30日に及ぶ 例)1967 (1948, 1950も可能性あり) 完全な増光リストについては論文を見いだせていませんので、どなたか資料をお持 ちの方、調査していただければ幸いです。1989年の前の増光は1986年にありました。 連星系(激変星)としての特徴 1)連星の公転周期が1.996803日と激変星のなかでは特に長い。同様の周期を持つ 例は反復新星のU Sco程度しか知られていない。 2)強いX線源(A0327+43)である。またX線で周期351秒のパルスがみられ、これ らの特徴は、強い磁場を持った白色矮星を主星に持つ激変星(351秒は白色矮星 の自転周期と考えられる)で、白色矮星の自転と連星の公転運動が同期してい ないタイプ、"intermediate polar"(中間ポーラー)に由来するものと考えら れる。 このようなこともあって、X線天文衛星の観測では強い磁場を持った白色矮星への 降着メカニズムを調べるために、かなり注目されている星です。1989年の増光の時 にも「ぎんが」衛星が観測をしています。矮新星増光理論で期待される降着円盤の 不安定性の発現と白色矮星への降着がどのような時間間隔で起こるかは、観測の一 つのポイントです。そのため可視光での立ち上がりがいつであったかを決定するこ とは理論的にも重要な意味を持ちます。今回・前回ともに光学観測には条件が悪い (特に日本では)位置だったので、初期過程については詳しく調べられていないよ うです。 1989年の増光の時は、ちょうど明け方の空で大きな月が通過してゆく時に増光が 始まりました。70年ぶりに帰ってきたP/Brorsen-Metcalf彗星や、地球をかすめてい った小惑星1989PBを迎え、また現在最も有力なブラックホール候補とされるV404 Cyg の増光、ボイジャーの海王星最接近など、天文学の歴史にも残るであろう出来事の 相次いだ、思い出深い真夏の日々でした。山猫さんそうでしたね。そういえば1986 年の時もP/Halleyがありました。 References: Bianchini, A., Sabbian, F., Favero, G.C., and Dalmeri, I, 1986, Astron. Astrophys., 160, 367 Patterson, J., 1991, Publ. Astron. Soc. Pacific, 103, 1149 (可視光でのP=351 秒など短時間変動について) Sabbadin, F. and Bianchini, A., 1983, Astron. Astrophys, Suppl. 54, 393
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