Historical document: AC 211 in M15 その昔、某所で紹介した文書ですが、今となっては新しい人はほとんど読めない ようなところに行ってしまっていると思われますので、文書が見つかったところ でその都度紹介していきたいと思います。内容は古いものも多いので、その点は 考慮して読んでください。一部当時関係した人名が出てくるところもありますが、 ご了承ください。 (1992/07/01) AC211 in M15 最近のIAUCはX線連星ネタで盛り上がっているようですが、IAUC No.5551 に V1333 Aqlと同じS. A. Ilovaisky and C. ChevalierのAC211(球状星団M15 中心にあるX線連星)の観測が出ています。最近はずいぶん熱心に測光観測を やっているみたいです。 さてAC211ですが、もともとは球状星団の中心部に発見されたX線源(X2127+119) だったのですが、M15の中心部ということで、観測は極めて困難。光学同定も最 近になってやっと成功したものです。X線連星の中でもlow-mass X-ray binary と呼ばれる種類のもので、中性子星と軽い星の連星系で、ちょうど激変星の白色 矮星を中性子星に置き換えたようなものと考えていただければよろしいでしょう。 星の込み入った領域ですが、Hα輝線を頼りに視線速度観測が行われ、軌道周 期が求められたのが数年前(日変研の「変光星」には紹介した覚えがあるのです が、正確な年度を覚えていない)、その視線速度曲線が不連続な変化を示すとい うことで、X線連星からある特定の方向に流出するガスの流れがあるとか想像さ れていたものです。 今回高解像度の望遠鏡によって、中心部の星が十分よく分解できるようになり、 精密な測光観測が可能になったので再度観測してみると、周期は元々言われてい た値の2倍の17.11時間であることが明かになったようです(多分視線速度曲線 の異常もこれで説明できるのではないでしょうか)。おもしろいことに、この 可視光での極小の位相に一致してX線でも30%程度強度が下がるということだそ うです。中心天体がわずかに食されるのかも知れません。
Return to the Powerful Daisaku Nogami
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