Historical document: Superhumps in X-ray Nova Mus 1991 その昔、某所で紹介した文書ですが、今となっては新しい人はほとんど読めない ようなところに行ってしまっていると思われますので、文書が見つかったところ でその都度紹介していきたいと思います。内容は古いものも多いので、その点は 考慮して読んでください。一部当時関係した人名が出てくるところもありますが、 ご了承ください。 (1992/06/17) 論文紹介)X線新星にスーパーハンプを発見か? "Periodic Variability in the Optical Counterpart of X-ray Nova Muscae 1991" Charles D. Bailyn Ap. J. 391, 298 (1992) 1991年1月9日にぎんがとGranatのX線天文衛星によって発見されたX線新星、 Nova Mus 1991は、X線新星のなかでも高いエネルギー成分の欠如した soft X-ray transient (SXT)として注目を集めている。これまでに発見されたSXTには、 V616 Mon(=A620-00), QZ Vul(=GS2000+25), V404 Cyg(=GS2023+338)があり、高い エネルギー成分の欠如は物質がコンパクト天体に落下する時に中性子星のように硬 い表面を持たない、ブラックホールに落下するためではないかと解釈されており、 Cyg X-1と同様にX線での速い時間変動を示すこともふまえて「新星型ブラックホ ール候補」と総称されている。特にV616 MonとV404 Cygについては静穏時の視線速 度観測から見えない星の質量の下限が求められ、それがブラックホールの質量に相 当することから、現在ブラックホールの実在を最も有望視されている天体のひとつ である。 この論文では連星系のコンパクト天体の質量推定方法として最近理論的にも観測 的にも注目を集めている、降着円盤の伴星による潮汐変形を利用した方法を適用す ることを試みている。矮新星に対しては コンパクト星の質量/伴星の質量>3の場 合に降着円盤がロッシュローブを満たすぐらいに成長した場合伴星の潮汐力によっ て変形を起こし、スーパーハンプと呼ばれる光度変化が観測される(この現象を示 すものはSU UMa型矮新星と呼ばれる)ことが知られているが、同様の基準をX線連 星にも適用しようという考えである。 1991年4月21日から6月8日までのVバンド(X線新星でも降着円盤の外側は可視 光で観測できるのです)の観測から、変光範囲0.2-0.3等の変動が観測され、最も 確からしい周期は631分であることがわかった。連星の軌道周期が明かでないが、 これはスーパーハンプ現象と類似のものと思われ、コンパクト星がブラックホール である証拠をさらに強めるとともに、X線新星のアウトバーストの機構として矮新 星、特にSU UMa型星との類似性を示唆するものである。 * X線新星は可視光でも案外明るく見えます。例えばV616 Mon, V404 Cygは11-12 等になり、Nova Mus 1991でもこの観測の時(すでにかなり減光していますが)14等 台でした。V404 Cygの時は可視光の測光観測が十分でなく、いまだにスーパーハン プの存在を議論できるデータがありません。この等級の天体の測光観測はCCDを 持ってすればすでに小口径でも十分可能なもので、次のX線新星(年に1個ぐらい は観測可能なものが出現しています)あるいはV404 Cyg, V616 Monの再増光の時に は連続観測ができる準備を進めたいものです。またSU UMa型のように短い増光があ るかどうか(この著者はSXTのアウトバーストはすべてスーパーアウトバーストに 相当するものではないかという考えを提案していますが・・日変研某氏の推測も案 外当たっていたりして)も観測的に明らかにする必要があるでしょう。
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