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[vsnet-j 2651] Historical document: blue stragglers in M67



Historical document: blue stragglers in M67

 その昔、某所で紹介した文書ですが、今となっては新しい人はほとんど読めない
 ようなところに行ってしまっていると思われますので、文書が見つかったところ
 でその都度紹介していきたいと思います。内容は古いものも多いので、その点は
 考慮して読んでください。一部当時関係した人名が出てくるところもありますが、
 ご了承ください。

(1992/06/17)

論文紹介)M67のblue stragglersは脈動変光星

"The Oscillating Blue Stragglers in the Open Cluster M67"
Ronald L. Gilliland and Timothy M. Brown
Astron. J., 103, 1945 (1992)

 さて、blue stragglerという星はちょっと前までは、さまよえる青い鳥、じゃな
かった(^_^;)、青い星、という訳語が与えられていたのですが、最近はそのまま呼
ぶことがかなり多いような気がします。これは何かというと、よく知られているよ
うに星の進化の道筋は大筋はその質量で決まり、質量の大きい星ほど早く主系列を
離れ、巨星へと進化します。そのため星が同時に生まれたと考えられる星団におい
ては、その年齢に応じてある質量より大きい星はもはや主系列に存在しないはずで
す。
 しかしながら、星団によっては大質量と考えられる星がまだ残っている例があり
ます。ペルセウス二重星団のように若い散開星団では明かではないのですが、球状
星団や、M67,NGC188といった特に年齢の古い散開星団では、大質量の星がすでに進
化を終えており、そのような異端の星の存在がわかりやすいのです。大質量の主系
列星は青い色なので、blue stragglerと呼ぶというわけです。なおある星が星団に
属するかどうかは、その視線速度と固有運動を測ることで、かなり確実に決定でき
るため、偶然同じ方向に見える星ということはまず考えられません。
 これらの星がなぜ存在するのかは星の進化理論にとってなかなか魅力ある対象で、
これまでいくつかの仮説が提唱されてきました。

 1)星団の中では、星は同時にできるのではない。blue stragglerは遅く生まれ
た大質量の星である。
 2)星の内部の混合が異常に効率よく行われ、外層の水素が中心に供給されたた
め、通常の星よりも長生きできた。
 3)もっと軽く進化していない星が合体した。この場合は、W UMa型のような連星
を介して合体するという考えと、星団内部での星の衝突によるという経路が考えら
れる。

 特に最近注目を集めているのが3)の説で、近年の観測技術の進歩で球状星団の
中心部にX線連星や連星パルサーなどの連星の証拠が次々と見つかり、またHST
の観測によって球状星団の中心部に大量のblue stragglerが発見されたという事実
から、星の合体や連星形成がblue stragglerの形成に関係あるということが想像さ
れます。またM67,NGC188などblue stragglerの頻度の高い星団にいくつかのW UMa
型連星が発見されているということもこれを裏付けています。
 そのような事実に刺激を受けて、blue stragglerの中に連星の証拠を探そうとい
う観測が最近かなり行われるようになってきました。特にCCDの発明により多数
の星の変光を同時に調べることができるようになって、急にこの分野の研究が進み
ました。そしてM67のblue stragglerの3個のうち2個が変光星であることが1991年
Gilliland and Brownによって発見されました。

 彼らはこの論文で観測をさらに進め、これらの天体がp-modeの非動径脈動による
多重周期現象を示す、δ Sct型変光星であることを明かにしました。そして脈動の
観測された2個は見事にδ Sct型変光星の不安定帯に、1個はわずかにはずれた所
に位置しています。
 変光星やっていながら脈動理論は詳しくないのですが、星の進化モデルからそれ
ぞれの星の予想される周期を計算して、年齢などを推定することができるのだそう
ですが、ここでは1)の仮説を確実に否定できるほどの資料は得られていないよう
です。よく知られているように多重周期現象を示す星の周期を詳しく観測すると、
星震学(astroseismology)と言われるようにその内部状態や自転軸の方向までも定
めることができます。著者はそれを利用して2個の星のパラメータを求めており、
今後の詳しい観測によって細かいモデルによる差まで明かにできるのではと考えて
います。

* これらの星は11-13等、一番振幅の大きい振動で変光周期0.05日、変光範囲0.006
等。この程度の測光精度は適当な大きさの望遠鏡とCCDを用いれば達成可能なも
のです。このタイプの非動径脈動変光星の観測に一番大事なことは、周期解析のた
めになるべく連続した長時間の観測が必要だということです。1カ所からの観測で
はいくら高い精度の観測を行うことができても、多数の周期が重なり合ったものを
正しく分解することはできません。その意味で現在whole earth telescope(WHT)と
呼ばれる全世界の望遠鏡をネットワークで結んで、欠測時間をなくしてしまおうと
いう方法が盛んに行われつつあり、GW VirやV471 Tau,激変星、昨年秋のNGC1501の
中心星など実際に観測成功例が増えてきています。
 よく知られているように、日本は北半球の天体観測において特殊な位置を占めて
います。公共天文台クラスの望遠鏡でCCDがあれば、このような国際共同観測に
十分参加することができますので、変光星の観測においても国際協力をお願いした
いと思います。

 ・・あまり論文紹介になっていない気もするけど、まあこの辺で許してね


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