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[vsnet-j 2650] Historical document: DO Dra (YY Dra) is a DQ Her star



Historical document: DO Dra (YY Dra) is a DQ Her star

 その昔、某所で紹介した文書ですが、今となっては新しい人はほとんど読めない
 ようなところに行ってしまっていると思われますので、文書が見つかったところ
 でその都度紹介していきたいと思います。内容は古いものも多いので、その点は
 考慮して読んでください。一部当時関係した人名が出てくるところもありますが、
 ご了承ください。

(1992/06/28)

論文紹介) YY Draの短周期振動

  "Rapid Oscillations in Cataclysmic Variables  VIII
       YY Draconis (=3A1148+719)"
   Ap. J. 392, 233 (1992)
   J. Patterson, D.A. Schwartz, J.P. Pye, W.P. Blair, G.A. Williams,
     and J.P. Caillault

 3本連続で矮新星ネタ。恐縮です。

 GCVSではDO Draとして登録されていて、IAUCなどでもその名称が使われている
のだけど、YY Draという名称に改名されるのでしょうか? ことの起こりはAriel 5
X線天文衛星の発見したX線源、3A1148+719の同定に始まります。このX線源の近く
にはすでにGCVSの登録されていた食変光星YY Draがありました。ところがその発
見論文には星図がなく、光学観測によってX線源との同定と変光星の再発見の努力が
アメリカとドイツのグループによってなされました。最初に成功したのはこのPatter-
sonのグループで、X線源が16等の激変星と同定されること、そしてYY Draと同一
の天体であると考えられることを1982年Ap.J.に発表しました。
 一方でSonneberg天文台のパトロール写真を調査したWenzelは、この天体が矮新星
増光を示す天体であることを見いだし、食変光星のYY Draとは異なるとして1983年に
発表しました。これを受けてGCVSの編集委員会が1987年に別の変光星名称DO Dra
(しかも注には「YY Draとは別物」と書かれている)を付けてしまったのが、余計な
議論のもととなってしまったようです。

 このような歴史的経緯はともかく、このYY Dra(どうも変光星観測者にはDO Draの
方がはるかになじみがあるのだけどナァ)は光学同定当初からX線強度と可視光強度
の比が最も大きい激変星として注目を集めました。というのはX線で発見された激変
星の多くは「強磁場激変星」と呼ばれる、強い磁場を持った白色矮星を主星に持つ激
変星(ポーラーと呼ばれるAM Her型激変星と、中間ポーラーと呼ばれるDQ Her型激変
星の総称)であったからです。観測ではその証拠がなかなかつかめなかったのですが、
この論文では275秒の周期性の発見を中心に(表題の振動というのはそのような意味
です)この星10年の観測のまとめを記述しています。
 分光のことや軌道周期の決定、エネルギー分布のことは省略することにして・・
問題の周期性についてみてみると、Uバンドで1%の振幅の周期275秒の振動が認め
られたということです。550秒にも弱い周期性が見られます。ところがBバンドでは
少し違う周期266秒が得られるのだそうです。彼らは266秒の方を白色矮星の自転周期
と解釈し、275秒を白色矮星の自転と伴星の公転の会合周期であると解釈しています。
Bバンドでは連続光の寄与が大きく、Uバンドでは輝線とバルマー連続光の影響が大
きく、例えば降着円盤上のホットスポット(伴星からのガスの流れが降着円盤に衝突
する点)が中心星からのX線で電離され、そこからUバンドに寄与する輝線が出てい
るとすれば解釈可能なのだそうです。
 X線での周期の検出・高速分光による予想される輝線の変動の検出が待たれます。
ぼくはこの周期はあるいはQPOという解釈も可能ではないかと考えており、また
DQ Her型で矮新星というのも珍しいので(GK Per,EX Hyaぐらいのもの)増光の時に
どのような周期性が見られるのかも興味あることです。(最近矮新星増光時の高速測
光観測を呼びかける紹介記事ばかり書いているような気がする・・)

PS.この星は矮新星のなかでもとりわけ増光頻度の低い天体で、「変光星」No.146
(1991)によれば日変研の1984年から1990年までの912夜、1677点の観測のうち増光が観
測されたのはわずか3夜に過ぎません。あの日本を代表するスーパーオブザーバーの
小城氏をして「あの星だけはめぐり合わせが悪く、どうしても見られません」と言わ
せしめたとか。変光星観測者会議などで観測者が一堂に会すると、たいてい一度はこ
のような話題となり、「BC UMaを一度でいいから見たい」とか「DO Dra(このYY Dra
のこと)をもう一度拝んでみたいものだ」とか語り合い、見たことのない人がきょとん
として聞いているなかで、一人ぐらいは「DO Draは極小光度が明るいのでいつでもよ
く見えます」とか言うけしからん奴がいるものだ。


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