Historical document: superhump periods of SU UMa stars その昔、某所で紹介した文書ですが、今となっては新しい人はほとんど読めない ようなところに行ってしまっていると思われますので、文書が見つかったところ でその都度紹介していきたいと思います。内容は古いものも多いので、その点は 考慮して読んでください。一部当時関係した人名が出てくるところもありますが、 ご了承ください。 (1992/06/28) 論文紹介)SU UMa型矮新星のスーパーハンプ周期 "Superhump Timing in SU Ursae Majoris Systems: Implications of the Data for the Precessing Disk Model" Ap. J. 392, 678 (1992) Lawrence A. Molnar and Henry A. Kobulnicky なぜこの論文を選んだかといえば、日本の変光星観測者の誇る「変光星ブリテン」 (Variable Star Bulletin)が、ついにかの有名なApJに引用されたのです! X線新星のスーパーハンプの論文紹介でも述べましたが、SU UMa型矮新星におい ては、伴星の重力によって連星軌道中の降着円盤に変形が起こり、円盤の長軸方向 を伴星が通過する時に(正確に計算すると少しずれるのだそうですが)伴星から円 盤への潮汐効果が最大となり、円盤からの輻射量が増大する「スーパーハンプ」と 呼ばれる現象が発生します。この円盤の長軸は空間的に固定されているのではなく、 伴星による重力の影響で(3体問題の一種)、伴星の公転方向にゆっくりと回りま す。そのため円盤の長軸と伴星の会合周期(=スーパーハンプ周期)は連星の公転 周期よりも少し長くなります。実際にはスーパーハンプ周期(Psh)は、公転周期(Porb) より数%長いのが普通です。 この周期の違いの量((Porb-Psh)/Porb)は、理論的には連星の質量比(伴星/主星) によって決まることが予言されていますが、これまでその関係は観測的にはあまり 明かでなく、(Porb-Psh)/Porbは公転周期の方に強い関係があると思われていました。 また、降着円盤の変形が起こる条件も理論的には質量比<0.3と予想されており、こ れがSU UMa型矮新星とSS Cyg型矮新星を分けていると考えられており、この観測的確 認も求められています。この論文では質量比を中心に既知のSU UMa型矮新星の統計的 考察を行っています。 その結果としては、 1)(Porb-Psh)/Porbと公転周期との相関はむしろ弱く、質量比との相関の方がはる かに強い。 2)SU UMaにおける質量比の上限として0.22が得られた。 3)WZ Sge,WX Cetではスーパーハンプの出現が他の系よりも遅かったが、これは小 さい質量比の系で降着円盤の変形が起きはじめにくいためではないか。 4)(Porb-Psh)/Porbの実測値と理論値の比較では、Whitehurstの計算結果と合い、 Hirose and Osakiの計算結果は若干高めに出ているようだ。(Whitehurstの計算 方法が単純なので直接は比較できないと思うが・・) さて、どこで日変研の観測が出て来るかというと、星の名前では T Leo 論文とし ては Kato and Fujino のものです。残り3星(AW Gem,CY UMa,AQ Eri)についても表 に引用してありますが、論文を入手できなかったのか、Ritterのカタログからの引用 となっています。 この T Leo は今回の論文のキーポイントとなる天体で、(Porb-Psh)/Porbは0.090 と異常に大きな値を示しています。これは公転周期から予想される値には合わないの ですが、質量比との関係では延長線上に乗る、というのが1)の根拠となるものです。 この星は唯一2)の制限を破っていて(Shafter and Szkody)、質量比は0.51と求めら れています。これは観測か理論か何かに(さすがに気になったのか^^;; 彼らはスー パーハンプ周期はBulletinに発表された観測から求め直していますが、幸い合ってい たようです)問題があるためと考えられ、今後特に観測が求められる天体であるとさ れています。 ということで、T Leoのモニターが特に望まれます。前回のスーパーアウトバースト は1991年12月で、短い増光がいったん減光して数日で再度輝きスーパーアウトバース トに進展した特異な経過をたどりました。
Return to the Powerful Daisaku Nogami
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