Re: [vsnet-j 3041] extinction of Japanese crested ibis (Nipponia nippon) もしかしたら検索でひっかけてちょっとでも目を通してもらえたら多少なりとも 供養になろうかな、と思って表題を full name にしておきました。最初からそう しておいたらよかったのかも。 #専用のページを作るまでの気力はないので (^^; > 高校の時、学校の正面玄関のそばの展示ケース(よく優勝旗とかカップの飾 > ってあるケースです)内に「朱鷺」の剥製が飾ってありました。戦前(もちろ > ん太平洋戦争のこと)に丹沢山中で捕らえたと説明が書いてありました。一応、 > 羽根の前面は朱鷺色をしてました。もう30年以上前のことです。 それだけどこにでもいたってことですよね。アメリカのリョコウバトの例もそう だけど、「どう考えてもいなくなりそうもないぐらい多数」いたものが短期間で 絶滅しちゃうんだから、生物種の存続がいかに脆弱な基盤の上にあるものかわか ります。 #実はこの分野に多少なりともかかわる経緯となったのが、高校生?ぐらいの時に #図書館で読んだ多分アメリカの書物の翻訳物でした。そこに出ていたリョコウバト #の最後の標本に添えられた "Martha extinct" (だったと思う) の文字が無性に #物悲しく、鮮烈な印象として残っています。日本のトキは近年でそれに匹敵する #ほど大きなできごとだったと思うけど、それだけのことを後世に残せるのか、と #考えると今の日本ではちょっと絶望的な感じすらします。ちょっと昔に「プロジ #ェクトX」で放映された番組でも多分に美化されたお話(ドキュメンタリという #より本質はバラエティだな)に組み立てられただけのように思えました。 それで、「それだけたくさんいた」トキの減少を乱獲、自然破壊、農薬の使用等 で一括りに片付けてしまうのは簡単だけど(だいたいそういう書き方が多いです ね)、「ちょっとやばい」状態になってからの対応がいけない。これは多分現代 にも通じるところがあって、こういう部分こそ真っ先に「構造改革」して欲しい んだけどな(^^;)。詳しいことは前述の文献を見ていただくのが一番と思いますが、 いつの時代でも現場の専門家より中央の権威や規定路線優先、地上個体群が日本 にしか確認されていなかった時点で、手探りの捕獲「実験」(これに失敗すれば 1種を絶滅させるってことわかりつつ、経験を貯えることすらなくやっちゃった んですね。同じような条件で医者が患者に執刀すれば、人体実験と呼ばれても不 思議でないところでしょう)、保護が必要とわかった時点ですら反対にあって禁 猟区の設定ができなかったとか、随所に見え隠れする功名心とか、こういうのが 全部合わさって絶滅に追い込んだんです。 多分この「功名心」がくせもので、マスコミ等が一緒になってこれを煽ってきた 感じ。それが(中国で成功したような)地道な長期の活動が実を結ぶことを阻害 してきたんだろうな、とも思える。この状況はそのまま現代に通じるように思え るのだが、例えば変光星のようなほんの小さな分野をとってみても、新星が発見 された直後だけ申し訳程度の早期観測を率先して報告してきてその後は音沙汰も なし、というケースが多いような気がするけど、これも同じようなところに根が ありそうに思える。そしてそういう活動を結果的に選択的に目立たせてしまう方 向へのプロ側の意識や動きが、トキを絶滅に追いやった当時の関係者の意識と自 分の中では同罪のように思えてしまうのであります。 それはともかく、トキの場面でも、それぞれの関係者は与えられた立場の中でそ れぞれ全力を尽くした、のかもしれない。しかし全体のプロセスとして最善が尽 くされていたようには思えない。何かが間違っていた、そして報道から見る限り それはおそらく今もそうなんだろう。
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