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[vsnet-j 1399] MisV新変光星の同定調査



MISAOプロジェクト・アナウンスメイル (2001年7月16日)

MISAOプロジェクトの吉田誠一です。

MISAOプロジェクトで発見された新変光星は、5月30日現在、1119個に達してい
ます。しかし、これらの変光星の多くは、2夜もしくは3夜の観測しかなく、
どのような変光星であるか、そのタイプは不明なものが多くあります。

その中には、もしかしたら新星や激変星といった、貴重な天体が含まれている
かもしれません。それを確かめるためには、DSS (Digitized Sky Survey) の
ような画像を調査する必要があります。ですが、すべての新変光星について画
像を確認するのは、時間がかかります。

これまでMISAOプロジェクトでは、新変光星を発見した場合は、GSC 1.1、
USNO-A2.0 という2種類の恒星カタログ、及び IRAS Point Source Catalogue
という赤外線カタログをチェックし、天体のデータが記録されていないかどう
かを調べていました。これらのカタログに載っていれば、新星や激変星ではな
いと判断できます。

しかし、MISAOプロジェクトで発見される新変光星は暗いものが多いためか、
これらのカタログにデータが記載されていない天体が、非常に多くありました。
そのため、新変光星の中から注目に値する新星・激変星の候補を絞り込むこと
ができませんでした。

最近になって、新しい恒星カタログ、赤外線カタログが多く入手できるように
なりました。そこで、イギリスのJohn Greaves氏と吉田誠一は、改めてすべて
のMisV新変光星について、カタログにデータが記載されているかどうかを調べ
てみました。

具体的に調査したカタログは、下記の通りです。

・2MASS (The Two Micron All Sky Survey)
  http://vsnet.ipac.caltech.edu/2mass/

  全天に渡る赤外線カタログです。現在は全天の半分のデータだけが公開され
  ていますが、2002年にはすべてのデータが公開されます。約3億個のデータ
  を含み、非常に暗い星まで網羅されています。従来の恒星カタログと同等以
  上の精度で位置が求められています。JバンドとKバンドの等級から、天体が
  赤色変光星かどうかを判定することも可能です。下記のサイトで検索できま
  す。

    GATOR
    http://irsa.ipac.caltech.edu/applications/Gator/

・UCAC1 (USNO CCD Astrograph Catalog)
  http://ad.usno.navy.mil/ucac/

  16等までの恒星の高精度な位置カタログです。2002年には UCAC2 が公開さ
  れ、2003年には全天を網羅する予定です。下記のサイトで検索できます。

    VizieR Service
    http://vizier.u-strasbg.fr/cgi-bin/VizieR

・GSC 2.2 (Guide Star Catalog II)
  http://vsnet-gsss.stsci.edu/gsc/gsc2/GSC2home.htm

  おなじみの全天恒星カタログ GSC 1.1 の次期バージョンです。GSC 1.1 で
  は13〜16等ほどまでしか含まれていませんでしたが、GSC 2.2 では19等まで
  のデータが含まれています。2つのバンドでの等級も記録されています。
  GSC 2.2 は約4億個の恒星データを含んでいます。最終版の GSC 2.3 は、
  2002年に公開されます。GSC 2.2 のホームページで検索できます。

・MSX5C (Midcourse Space Experiment Point Source Catalog)
  http://vsnet.ipac.caltech.edu/ipac/msx/msx.html

  銀河面の赤外線カタログです。非常に暗い星まで含まれており、2MASSのデー
  タが公開されていない箇所では、特に重宝します。下記のサイトで検索でき
  ます。

    VizieR Service
    http://vizier.u-strasbg.fr/cgi-bin/VizieR

最近のカタログには暗い星が多く含まれています。特に、CCDカメラでは明る
く写るミラ型のような赤色変光星は、ほとんどが2MASSにデータが記載されて
います。

この調査により、1119個のうち、いずれのカタログにも記載されていない天体
は、わずかに27個までに絞り込まれました。

残った27個についても、John Greaves氏と吉田誠一が、下記のサイトで過去画
像をチェックした結果、新星や激変星ではないことが判明しました。

    USNO Flagstaff Station Integrated Image and Catalogue Archive Service
    http://vsnet.nofs.navy.mil/data/FchPix/cfra.html

    Astronomical Image On-line Access Interface 
    http://dss.mtk.nao.ac.jp/

今回の同定の調査結果は、MISAOプロジェクトのホームページで公開されてい
る、新変光星のカタログで見ることができます。

また、7月9日に発行された IBVS 5135

    The 76th Name-List of Variable Stars
    http://vsnet.konkoly.hu/cgi-bin/IBVS?5135

では、179個のMisV新変光星に正式な符号が与えられました。今後、MisV0001
は「いて座V4652星」、MisV0002は「ぎょしゃ座V523星」と呼ばれることにな
ります。これらの符号も、ホームページで公開されている新変光星のカタログ
で見ることができます。

P.S.
過去のMISAOプロジェクト・アナウンスメイルは
  http://vsnet.aerith.net/misao/index-j.html
で閲覧できます。

--
吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
comet@aerith.net
http://vsnet.aerith.net/index-j.html

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