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GK Per



920707

 前回の増光は1989年7月にあり、「天文ガイド」1989.11 p.162 変光星近況によ
れば、  13.0-13.2(7/1-13) 12.6(7/24) 12.2(7/25) 12.0(7/27) 11.5(7/28) 11.2
(7/30)と変光しました。今回ももし増光途中であるならば、この後1週間程度で最
大光度11等程度に達するものと予想されます。

 なおこの星は矮新星としては、周期3年程度で増光を繰り返し、増光がゆっくり
という、EY Cyg(#210参照)に良く似た変光を示します。

  さて、お待ちかねこの星の過去の変光ですが、1901-1982の光度変化については
Sabbadin and Bianchini (1983) がまとめており、これに1983年のアウトバースト
を加えて Bianchini et al. (1986) が解析しています。

 これらによると、GK Perの爆発後の変光は以下のようにまとめられそうです。

1)1916年、極小光度mv=15等に達した。(これは連星を形成する星本体のみの光
度に近いものであろう。現在の静穏時の光度は約13等なので、星本体に比べて現在
の降着円盤がいかに明るいものかわかる)

2)1920-1930年代には、14.2-12.0等の範囲を典型的な周期として40,80,400日で
ふらついていた。この期間系の光度は次第に上昇、1940年代には13等を下ることは
ほとんどなくなった。

3)1948年以降、非常にゆっくりと減光。矮新星型の増光を示し始めた

4)増光間隔は400±40日の倍数で起きているらしい。

5)その他に、7-8年周期のゆっくりした変動があるように見える。

 増光の分類

 矮新星、例えば SS Cygと同じように、アウトバーストにはいくつかの種類があ
るようです。SS Cygの場合にはアウトバーストの継続時間は変化するものの、最大
光度はさほど変化しないのに比べ、GK Perでは最大光度がかなり変化することが特
徴的です。果たして今回のはどの分類に属するでしょう?(分類型はBianchini et
al.1986による)

1)small(S)型 : 増光振幅 1.0等 例)1973, 1978
2)medium(M)型: 増光振幅 2.0等 例)1946, 1966, 1970
3)large(L)型 : 増光振幅 3.0等 例)1975, 1981
4)wide(W)型  : 増光振幅 1.0等、極大継続時間は30日に及ぶ
        例)1967 (1948, 1950も可能性あり)
 完全な増光リストについては論文を見いだせていませんので、どなたか資料をお
持ちの方、調査していただければ幸いです。1989年の前の増光は1986年にありました。

 連星系(激変星)としての特徴
1)連星の公転周期が1.996803日と激変星のなかでは特に長い。同様の周期を持つ
例は反復新星のU Sco程度しか知られていない。
2)強いX線源(A0327+43)である。またX線で周期351秒のパルスがみられ、こ
れらの特徴は、強い磁場を持った白色矮星を主星に持つ激変星(351秒は白色矮星
の自転周期と考えられる)で、白色矮星の自転と連星の公転運動が同期していない
タイプ、"intermediate polar"(中間ポーラー)に由来するものと考えられる。
このようなこともあって、X線天文衛星の観測では強い磁場を持った白色矮星への
降着メカニズムを調べるために、かなり注目されている星です。1989年の増光の時
にも「ぎんが」衛星が観測をしています。矮新星増光理論で期待される降着円盤の
不安定性の発現と白色矮星への降着がどのような時間間隔で起こるかは、観測の一
つのポイントです。そのため可視光での立ち上がりがいつであったかを決定するこ
とは理論的にも重要な意味を持ちます。今回・前回ともに光学観測には条件が悪い
(特に日本では)位置だったので、初期過程については詳しく調べられていないよ
うです。

References:
Bianchini, A., Sabbian, F., Favero, G.C., and Dalmeri, I, 1986,
  Astron. Astrophys., 160, 367
Patterson, J., 1991, Publ. Astron. Soc. Pacific, 103, 1149 (可視光でのP=351
  秒など短時間変動について)
Sabbadin, F. and Bianchini, A., 1983, Astron. Astrophys, Suppl. 54, 393