補足説明 「ガンマ線バーストの距離」



ガンマ線バーストは我々の銀河の外 (銀河系外)であり、多くのものは極めて遠方、すなわち宇宙の最深部 (我々からの距離が遠いことは、光が天体を出たのは遥か昔、 すなわちその当時の宇宙は現在よりも遥かに若い時期であることを 意味します)で起こる現象です。
しかし、どのようにしてガンマ線バーストの「距離」は決定されるので しょうか?

ガンマ線バーストの距離は宇宙の膨張速度から推定することができます。
良く知られているように宇宙は膨張しており、遠くの天体程速い速度で 我々から遠ざかっています。従って、我々から遠ざかる速度が測定できれば、 そこから天体までの距離を得ることができます。遠ざかる速度の測定には 光のドップラー効果を利用します(より正確には宇宙の膨張に伴う効果で、 正確な扱いには一般相対性理論を必要としますが、ここでは簡単のために ドップラー効果を利用した説明をします。より詳しい説明が必要な方は 植村までお問い合わせください)。救急車のサイレンが近づいて 来る時と遠ざかる時とで異なって聴こえるのはドップラー現象の一例と して良く知られています。この現象は波の発生源がもつ速度によって 我々に届く波長が本来の波長と異なるために生じます。救急車のサイレンの 場合は、救急車の速度によって音波の波長が変化し、天体の場合は我々から 遠ざかる速度によって光の波長が変化します。このため、本来紫外線域で 観測されるはずの光が可視域で観測される、といったような現象が起こり、 どれだけ波長のずれが生じたかを測定することで、天体の速度を決定し、 天体の速度と天体の距離との間にある関係があることを利用して (我々に近い距離の場合は、天体の速度と天体の距離はほぼ比例します: ハッブルの法則)距離を推定するのです。

GRB030329の場合、 海外の研究者の観測によって天体までの距離は20億光年と報告されています。 この距離はガンマ線バーストと確定した天体の中では、最も近いものです。


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