VSOLJニュース (015) 特異なIIn型超新星(?)1999bw 著者 :山岡 均(九大理) 連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp 水素の線スペクトルが観測されるII型超新星のうち、線の幅が狭いものを IIn型と呼んでいます。線の幅は天体の膨張速度を反映したもので、幅が狭い のは膨張が遅いことに対応します。この種の超新星は、一般に超新星界で最も 明るいとされるIa型と比べて、同じもしくはそれよりも明るいような例(1999E など)もある一方で、それよりも6等以上暗いようなものもあります。とはいえ、 古典的な新星と比べると100倍ほども明るいので、新星現象とは違います。 4月中旬にLick天文台の超新星捜索チームが発見した超新星1999bwは、この 暗い部類に入るもののようです。発見当初、超新星としてはあまりに暗いため か、なかなか超新星としての符号が与えられませんでしたが、スペクトル観測 によって爆発・膨張していることがわかって、1999bwという名前が付きました。 超新星が出現した銀河は、おおぐま座にあるNGC 3198という棒渦巻銀河で、距 離は10Mpcほどとかなり近いものです。普通これくらいの距離に超新星が出現 すると、極大の頃にはIa型では11等、II型でも13等くらいになるのですが、こ の超新星は発見後しばらく18等前後で推移していました。 過去にも、SN 1961Vに代表される非常に暗い超新星がありました。古典的な 超新星カタログではV型として分類されていたものですが、最近では特異なIIn 型と呼ばれるようになっています。この種の天体の正体はまだわかっていませ んが、非常に重い星が、進化の途中で表面を吹き飛ばす現象ではないか、との 説も提唱されています。進化の最終段階での爆発ではないとすると、超新星と 呼ぶべきかどうかも問題になるところです。 4月末になって、北海道名寄市の佐野康男氏の観測では、この1999bwが17.6 等ほどまで明るくなっていることが示されています。特異な超新星の例として、 これからも注目される天体です。 1999年5月4日 ※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJの速報メーリングリスト vsolj-alert にご加入いただくと便利で す。また、これらの天体についての科学的議論のためのメーリングリスト vsolj-sci もご利用いただけます。購読・参加お申し込みは vsolj-adm@ooruri.kusastro.kyoto-u.ac.jp まで。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。