山岡@九大理 です。 またもや注目に値する超新星の出現です。何かこのところ多いので狼少年みた いに思われるといけませんが、今回のものは、Ia型超新星の絶対光度に関する 研究を大きく進展させるかもしれない、重要なものになりそうです。 IAUC 6890, 6891によると、イギリスのアマチュア天文家アームストロングさ んが、4月29.074日UTに撮影した画像から、楕円銀河NGC6495に新しい恒星像を 見いだしました。位置は、イギリスのグループの測定では赤経17h54m50s.71、 赤緯+18o19'49".3、ダイニックの杉江さんの測定では50s.72, 50".2で、銀河 の中心から北に約15"のところにあたります。 これまでの報告では明るさは、 1998 3/20.283 >16.7 CCD 4/29.074 14.8 CCD 29.135 14.7 CCD 30.54 14.9-15.1 V ということです。 スペクトルが2つのグループによって観測されています。いずれのグループも、 SN 1998bpは特異なIa型超新星で、極大に近い頃だと報告しています。Ia型超 新星の特徴は、615nm付近に深い吸収が見られることで、これは静止系で635nm のSi IIだと考えられていますが、SN 1998bpではこの吸収が他のスペクトル線 に比べて弱く、580nm付近の吸収(静止系で596nmのやはりSi IIと考えられてい る)が比較的強いのが、非常に暗かったIa型超新星1991bgと似ていると言って います。色も、星間吸収は少ないのに典型的なIa型超新星の極大時よりはやや 赤いようです。ただし、P Cyg profileを呈している、というのはちょっと疑 問(普通、極大付近のI型超新星は、吸収のみが目立っていて輝線はあまりない) ですし、青い側のスペクトルは1991bgとは似ていないようです。総体的に見て、 なかなか特異なものです。 母銀河の後退速度は、文献や、上記の輝線からの測定で、 CfA redshift catalog 3208 km s-1 Di Nella et al. 3127 今回の輝線観測 4500 という値が与えられています。これらから判断すると、この母銀河は、おとめ 座銀河団の3-4倍遠くにあるようです。典型的なIa型超新星が、おとめ座銀河 団の3倍の距離にあると、極大光度は14.7等ほどになると予想されるのですが、 これと上の測光結果を比べると、1998bpはそれほど暗くなく、ほぼ典型的なも のと同じ、ということになってしまいます。さきほど挙げたSi IIの吸収線の 強度比は、Ia型超新星の明るさの指標と言われている(Nugent et al., 1995, ApJ, 455, L147)のですが、それを覆すような話なのです。 今後、測光などのフォロー観測が強く期待されます。特に、極大後の減光率の 決定(これもIa型超新星の絶対光度の指標と言われている、Phillips, 1993, ApJ, 413, L105)は、今後の大きな目標でしょう。是非注目してみてください。 九州大学(六本松地区)理学部物理学教室 山岡 均 〒810-8560 福岡市中央区六本松4-2-1 yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp