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[vsnet-j 65] PIXY System 2 released.



吉田誠一です。

# misao-j への投稿の転載です。

本日、PIXY System 2 の最新版をリリースしました。MISAOプロジェクトのホー
ムページからダウンロードできます。是非お試し下さい。

旧版のPIXYと同様に、マッチングの後、最初はラフに、次第に精密にペアを選
別していく、段階的ペアリングを実装しました。また、歪曲補正も組み込みま
した。これで、旧版のPIXYと同様に、高精度の位置測定ができるようになりま
した。位置測定、光度測定の誤差や、歪曲の度合も出力しています。

実は、ペアリングの処理も、旧版をそのままコピーしたのではなく、手を入れ
てあります。その結果、PIXY 2の平均の位置測定精度は、旧版よりもはるかに
向上しているようです。

例えば、門田さんの、カシオペヤ座付近を35mm広角レンズで撮影した画像は、
22x15度の範囲が写っていて、1ピクセルの大きさは102.5秒角ほどです。この
画像の検査結果を旧版と新版で比較してみますと、次のようになります。

      極限等級  位置誤差  星数
  ----------------------------------
  旧版  8.99等   32秒角   3991
  新版  9.08等   11秒角   3652

また、門田さんの530mmによるサーベイ画像は、1.5x1.0度の範囲が写っていて、
1ピクセルの大きさは6.9秒角ほどです。この場合の結果は、次のようになり
ました。

       極限等級  位置誤差  星数
  ----------------------------------
  旧版  15.33等   2.3秒角  4045
  新版  13.57等   0.6秒角   967

こちらは、旧版はUSNO-A1.0を使って検査しましたが、新版はGSC 1.1を使って
いるため、暗い星のデータが無く、明るい星だけで検査されたので、その効果
もかなりあると思います。

しかし、いずれにせよ、旧版では1/3〜1/4ピクセルの精度だったものが、1/10
ピクセルの精度に向上したようです。修正内容から推測すると、暗い星のペア
ミスが無くなったことと、歪曲補正の精度が向上したことが理由だと思います。

ちなみに、35mm画像の歪曲(左)と、530mm画像の歪曲(右)は、以下の通りでし
た。

 2.0, 1.4         -2.5, 1.9	 0.4, 0.3         -0.3, 0.3
          0.1, 0.0		         -0.0,-0.0
 2.1,-1.3         -2.7,-2.0	 0.3,-0.2         -0.3,-0.2

画像の四隅と中心での、計算上の位置と測定位置とのずれを、ピクセル単位で
示してあります。計算上の位置は、正距方位図法でプロットした位置です。ま
た、歪曲の度合は、3次関数で近似しています。

1.5x1.0度という狭い画像でも、画像の端の方では、正距方位図法を使った場
合、0.3〜0.4ピクセルほどのずれが生じるのですね。

また、極限等級の自動設定も組み込まれました。ところで、極限等級の定義を、
PIXY 2では変更しましたが、新しい極限等級の考え方のすべてを、まだ実装し
てはいません。次回以降に回します。しかし、現在のバージョンでも、過剰検
出は抑制されていると思います。ちなみに、サンプル画像をGSCを使って検査
すると、GSCのデータ数が少ないため、極限等級がかなり明るくなります。

1枚の画像と星表との比較で、位置と光度を測定する、という機能に関しては、
旧版のほぼすべてを移植し終えました。まだ移植していない主な機能は、光度
がカタログの値と大きく異なっているような要注意天体の選別だけです。

星図ウィンドウでマウスの右クリックをすると「Save」というメニューが出ま
す。それを選ぶと、星図の全データをファイルに保存できます。

「VSNET/VSOLJへの光度レポート」を、単にファイルに結果を保存するのでは
なく、画面にExcelのような表形式でデータを表示するようにしました。ファ
イルに保存するデータの選択と、並べ変えができます。表ウィンドウでマウス
の右クリックをすると「Save」というメニューが出ます。それを選ぶとファイ
ルに保存できます。

星図でクリックしたり、表で選択したりすると、他の画像や星図や表の同じデー
タの場所にマークが付くような機能(データリンク機能)を考えていますが、
取り敢えず次回以降としました。

WindowsのPIXY起動プログラムで、インストールしたディレクトリに空白文字
が含まれている場合も起動可能としました。

次回は、おそらく2枚の画像を比較して移動天体や変光天体を発見する機能を
実装します。

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吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
comet@aerith.net
http://vsnet.aerith.net/index-j.html