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[vsnet-j 3029] ibis



ibis

 ibis って聞くと「確か衛星の検出器だよね」の方を連想される方の方が多そうな
 場所ですが(^^;)、一応鳥の名前です。INTEGRALの公式ホームページをみても、
 ロゴがなんとなくそれから来てそうですが、EGRET の時よりは抽象化が進んでいる
 かな(^^;)

 それはともかく、日本産トキの絶滅を迎えても(もちろん日本産の固体群としては
 ずっと昔に事実上絶滅しているわけですが)、世間で大した話題にもなっていない
 ようですし、簡単にアクセスできるオンラインの情報がある感じでもないので...
 その昔自然保護関係もちょっと関ったことあったし(今は何もやってないですが^^;)、
 日本産最後のトキのための海外発信のページの英訳とかに少し関与した縁もあって
 ちょっと思い入れもあるので、こりゃちょっと何か残しておいた方がよかろう、
 と思って、場所違いなのは承知で(いつものことですが ^^;)少しばかり。

 以下は昔某所に紹介した書籍情報で、この某所の情報もすでに残っていないみたい
 なので、まだ手元にある間にでも掲載しておきます。「トキって何」という方はさ
 すがに少ないとは思いますが、もし書店や図書館にまだ置いてあるようでしたら
 一度みてやってください。

 今国内では中国産トキの人工繁殖に成功していて、今となっては一見まるで大した
 ことすらなかったかのようですが、種の保存の面ではほとんど間一髪とも言える状
 態の幸運に近かったもので、当時の政府がこれらの貴重な海外個体を日本の威信を
 かけて(当時は珍獣外交とも言われていましたが *_;)借り受けるべく中国に(のみな
 らず隣接他国にも、なんて話もあったような)働きかけたとか、その個体は早々に
 死んじゃったとか、まあ今となっては忘れ去られたような事柄もありましたが、
 「結果的に成功したんじゃからまあいいじゃん」ではなくって、この歴史はやっぱ
 り記憶にとどめておかなくてはならないことなんだろうと思います。

 「世間で大した話題にもなっていない」こと自身が、トキをこの状態まで追いやっ
 た日本の愚かさが実はちっとも変わっていないことを象徴しているように思えて
 ならないです。

===

1992.08.13

【タイトル】トキが生きていた!
【著者  】劉 蔭増著,桂千恵子訳
【発行  】ポプラ社,ポプラノンフィクション58
【発行年 】1992年5月 (原著 1988)
【ページ 】142ページ
【定価  】980円
【ISBN】ISBN4-591-04108-5 C8045 P980E
【種別  】ノンフィクション,児童書
【分野  】トキ,自然保護
【目次  】第1章 トキ − しあわせの鳥
       大自然の子/悲しい運命/鳥にとってのきょうは…/万里の旅へ
      第2章 トキをさがして
       むかし,このあたりに/五まいの羽/船頭さんのことば/ふたたび
       山中へ/あれだ…まちがいない!/水田の再会/トキの一家
      第3章 トキとともに生きる
       きみょうな婚礼衣装/小さな家庭/おとなりさん/まねかざる客/
       ボケの花さくころ/子そだて/秋の日の旅/一発の銃声/七けん目
       の家/希望の大地
      解説 野生生物と人間との共存をめざして(樋口広芳)
【コメント】1981年1月日本のトキがすべて捕獲され,野生のトキはもはや地
      球上に存在しないと誰しもが考えていたところに,4カ月後に舞い込
      んできた中国での再発見の知らせ.このニュースが自然を守ろうとす
      る世界の人々にいかに大きな希望を与えたか計り知れないのですが,
      この本は好運な再発見が中国の研究者の何年もの粘り強い努力によっ
      てもたらされたものであることをわかりやすく語ってくれます.

       この本は研究者みずからの手によって,子供達のために書かれたも
      ので,そのこと自体,またこの本が日本の子供達のために翻訳された
      ことはとても意義深いことだと思います.
       幻のトキを探しての5万キロの苦難に満ちた旅なのですが,子供た
      ちはこの記録の中から枝葉のような科学の知識でなく,苦しさの中で
      も探求することの楽しさ,そして科学の面白さをきっと掴んでくれる
      と思います.(そう言えば最近科学の成果を雄弁に説く本は多いのに,
      このような本が減ったような気がします)

       本の最後は,次の言葉で締めくくられています

      「でもそのうちに,いつかきっと,よいニュースをおとどけできるこ
       とができるでしょう」

       最近聞いたばかりの人工繁殖の成功のニュースとともに,再発見後
      も怠ることなくトキの再生を目指して研究を続けていたひとびとの努
      力は,再発見への努力にも勝るものであると確信します.また何年か
      後に,[絶滅の淵からの復活,20羽からの出発]といったノンフィ
      クションをぜひ読みたいものです.

* 科学全体の枠組みから見たら小さなことなのでしょうが,不可能を可能にする
  ひとびとの勇気というのは,いつ読んでも感動させられます.ポプラノンフィ
  クションシリーズはそのような味わいの深い著作が多く,書店で買う時はちょ
  っと恥しい気もしますが,愛読しています.

===

1995.03.10

【本】 朱鷺と人間と
 久しぶりに本屋へ寄ってみたら、こんな本をみつけました。中国のトキ再発見
 のドキュメンタリに続いて、トキに関係する本の紹介は2冊目になるのですが、
 これは人間(いや、日本という国なのだろうか)の愚かさをまざまざと見せつ
 けてくれます。

【タイトル】 朱鷺と人間と
【サ  ブ】 保護活動40年の軌跡
【著  者】 須田中夫
【発  行】 プレジデント社
【発行年月】 1994年12月27日
【ページ数】 237
【判  型】 B6
【定  価】 1500円(本体1456円)
【ISBN】 ISBN4−8334−9008−0
【種  別】 記録
【分  野】 自然保護・鳥類
【検索キー】 トキ・野鳥・保護
【目  次】 1.朱鷺保護の第一歩
        (1)特別天然記念物指定で脚光を浴びる
        (2)「ときほご」と書かれた標柱
        (3)朱鷺の鳴き声
        (4)営巣放棄という事態が起きていた
        (5)朱鷺の営巣地、黒滝山
        (6)保護活動の第一歩、「入山禁止」と「新穂とき愛護会」
        (7)真実が語られていない
       2.営巣地と給餌地の確保
        (1)陳情を始めて五年目、黒滝山の国有林買い上げが確定
        (2)給餌地の確保で山の田圃を買い受ける
       3.朱鷺保護に寄せる人々の熱意
        (1)全国からの熱い支援と励まし
        (2)冬の給餌にまつわる一通の手紙
        (3)雪の道の思い出
       4.新潟県トキ保護センター設置へ
        (1)鉈切地蔵と朱鷺今昔
        (2)保護された「カズ」と「フク」
        (3)新潟県トキ保護センターが完成
        (4)「国際保護鳥」朱鷺とWWFからの保護資金
        (5)極秘の幼鳥捕獲作戦
        (6)宇治金太郎さんと「キンちゃん」
       5.朱鷺の楽園、黒滝山の最期
        (1)決定的ダメージを与えた一年間にわたるテレビ取材
        (2)新しい営巣地、立間はカラスの縄張り
       6.野生の朱鷺、全鳥捕獲へ
        (1)人工飼育に全力を注ぐ以外に道はない
        (2)全鳥捕獲の説明会
        (3)野生動物の保護活動にとって重要なこと
        (4)自然派と人工繁殖派
       7.人工増殖のスタート
        (1)受け入れ準備と「プロジェクトチーム」
        (2)人工保護増殖についての陳情書
       8.朱鷺をめぐる人間模様
        (1)九州からの助っ人
        (2)「シロ」の死
        (3)「朱鷺よ哀しいな」−−報道された人工繁殖の現状
        (4)中国の朱鷺
        (5)朱鷺が取り持つ“人の縁”
        (6)日中野生鳥獣保護会議
        (7)環境庁長官のトキ保護センター視察
        (8)「朱鷺を思う、天の声」が聞こえた?
        (9)名医の条件
        (10)トキ(時)は金なり
       9.保護行政に思う
        (1)現場を無視した事業
        (2)最初に敷かれた路線は変えないという図式
      10.まとめ
        (1)真理と矛盾
        (2)最後の望み
      おわりに
      資料編
        地図・年表
        ある古老の手記
        陳情書に添えた手記

【コメント】 

 日本産のトキが消え去った過去の動物となるのも時間の問題。その時公式見解
 として語られる言葉は何だろう。「全力を尽くしましたが及びませんでした」
 だろうか。それではトキは浮かばれない!ことを、長年保護に携わって来られ
 た須田さんのこの手記は語っています。

 今や遠いケージの彼方に消え行こうとしているトキ。そして40年にわたりこ
 の鳥たちに関わり続けた人たち。報道からは決して聞くことのできないであろ
 うこの生の声をぜひご一読いただきたいと思います。お読みになられた方はご
 感想をお聞かせいただけると嬉しいです。


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