vsolj-news 097: nova in NGC 205 = M110 VSOLJ ニュース (097) 山形の板垣さん、M110に新星と思われる天体を発見 著者 :山岡均(九大理) 連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp 銀河系外の新天体としては超新星が有名ですが、私たちの近くにある銀河で は、超新星よりは数等級暗いけれども爆発天体である新星現象が捉えられるこ とがあります。アンドロメダ大銀河M31の新星は、このところ毎年数例発見さ れていますが、そのお伴の銀河であるM110(NGC 205)に新星らしき天体が出現 しているのを、山形県の天文愛好家、板垣公一さんが10月5.56日(世界時、以 下同)前後に撮影した画像から発見されました。日本人が銀河系外の新星を発 見したのは、筆者の知る限り初めてのことです。板垣さんは以前から彗星や超 新星をいくつも発見されているベテランの天体捜索家です。 発見時、新星は1時間のうちに16.4等から16.1等へと急速に明るくなってい くところが捉えられています。天体の存在は、山梨県の串田麗樹さんによって 5.764日に確認されましたが、その時には天体は15.8等とさらに明るくなって いました。串田さんが3.65日に撮影した画像では19等より明るい天体はなく、 この天体は増光が始まって間もないものと思われます。確認画像から串田嘉男 さんが測定した新天体の位置は、 赤経 0時40分15.26秒 赤緯 +41度44分19.8秒 (2000年分点) で、M110銀河の中心から西に77秒角、北に193秒角ほどにあたります。ご存知 のように、アンドロメダ大銀河M31には、M32とM110という2つの明るいお伴の 銀河がありますが、M110はM31の北西側で、南にあるM32よりもややM31から離 れた位置にある楕円銀河です。 これらの銀河に出現する新星は、極大等級が15〜20等程度になりますので、 今回の天体が実際に新星ですと、最も明るい部類に入ります。新星は明るいも のほど増減光が速いという傾向にあり、この天体で見られた急速増光は、明る い新星の特徴に合致します。とすると、この天体が私たちの目を楽しませてく れるのは短い期間になる公算が強いでしょう。今後のスペクトル観測による天 体の性質の解明や、明るさの変化のようすの追跡が待たれます。 参考文献:IAUC 7984 (2002 Oct. 5) 2002年10月 6日 ※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJの速報メーリングリスト vsolj-alert にご加入いただくと便利で す。また、これらの天体についての科学的議論のためのメーリングリスト vsolj-sci もご利用いただけます。購読・参加お申し込みは vsolj-adm@ooruri.kusastro.kyoto-u.ac.jp まで。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。