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[vsnet-j 2314] 画像と星図との比較が困難な場所



MISAOプロジェクト・アナウンスメイル (2002年9月30日)

MISAOプロジェクトの吉田誠一です。

MISAOプロジェクトのホームページで、画像と、USNO-A2.0を使った星図とを、
見比べることが困難な場所について、紹介したページを公開しました。

  画像と星図との比較が困難な場所
  http://vsnet.aerith.net/misao/report/general/usno-matching-j.html

USNO-A2.0は米国海軍天文台で編集された恒星カタログです。およそ20等まで
の星が網羅されているため、特に画角の狭いCCD画像の場合は、星図と見比べ
て、星の位置や光度を求めるのに、便利です。

USNO-A2.0を使うと、彗星や小惑星の精測位置を、充分な精度で求めることが
できます。しかし、撮影した場所によっては、画像と、USNO-A2.0を使った星
図とで、星の配列がうまく一致しないことがあります。

特に、いて座の天の川の中心では、画像に写った星と、USNO-A2.0に載ってい
る星とを見比べても、どれとどれが同じ星なのか、良く分からないことがあり
ます。

PIXYシステム2を使って画像を検査すると、画像と星図との間で自動的にマッ
チングをします。その結果、両方にある星は、緑色で表示されます。画像にし
か写っていない星、星図にしか載っていない星は、赤い色で表示されます。

たいてい、画像と星図を見比べると、星の配列はほとんど一致しているので、
どれとどれが同じ星かは、すぐに分かります。PIXYシステム2で画像を検査し
た結果でも、ほとんどの星が緑色で表示され、赤く描かれる、画像にしか写っ
ていない星、星図にしか載っていない星は、わずかしかありません。

しかし、赤経18時、赤緯-28度から-30度の領域では、画像と星図との間で、星
の配列がほとんど一致しなくなります。この領域を撮影した画像をPIXYシステ
ム2で検査すると、赤い色で描かれる星ばかりになり、実際の画像と、
USNO-A2.0のデータとが、一致しないことが分かります。

前述のページでは、門田健一氏が撮影した、赤緯-28度、-29度、-30度の画像
の、それぞれの検査結果を紹介しています。興味深いことに、いて座の天の川
の中心でも、ちょっとした場所の違いで、際だった特徴が見られました。

赤経18時、赤緯-28度付近では、USNO-A2.0を使った星図には、明るい星が集まっ
た、いくつかの『散開星団』があるのが目立ちます。しかし、実際の画像では、
そのように、ところどころに部分的に星が密集しているのではなく、画像全体
にまんべんなく、星がびっしりと写っていることが分かります。『散開星団』
の星の多くは、赤い色で描かれているので、画像には写っていないことが分か
ります。

  赤経18時、赤緯-28度付近のUSNO-A2.0のデータ
  http://vsnet.aerith.net/misao/report/general/usno-matching/1800-2800-j.html

赤経18時、赤緯-29度付近では、USNO-A2.0を使った星図では、まるで暗黒星雲
に覆われているかのように、ほとんど星が存在しないように見えます。しかし、
実際の画像では、画像全体にまんべんなく、星がびっしりと写っていることが
分かります。つまり、この付近では、USNO-A2.0では星のデータがほとんど欠
落しています。

  赤経18時、赤緯-29度付近のUSNO-A2.0のデータ
  http://vsnet.aerith.net/misao/report/general/usno-matching/1800-2900-j.html

赤経18時、赤緯-30度付近では、USNO-A2.0を使って星図を描くと、一見、何の
問題もなく思えます。しかし、PIXYシステム2で検査すると、多くの明るい星
が赤く描かれ、画像と星図との間で、星の配列が一致していないことが分かり
ます。

このような領域では、画像と星図を見比べて、どれとどれが同じ星なのかを調
べるのは、とても難しくなります。誤って同定してしまう可能性が高い領域で
す。

  赤経18時、赤緯-30度付近のUSNO-A2.0のデータ
  http://vsnet.aerith.net/misao/report/general/usno-matching/1800-3000-j.html

また、これらの領域では、画像にしか写っていない、赤く描かれる星が多く検
出されます。それほど暗くない星でも、USNO-A2.0にデータが載っていないも
のが多くあることが分かります。

このような領域で、USNO-A2.0を使って彗星や小惑星の位置を求める場合は、
良く注意して、正しい比較星を選ぶ必要があります。

PIXYシステム2は、このような領域であっても、画像から検出した星像と、
USNO-A2.0のデータとの間で、どれとどれが一致するかを、自動的に求めるこ
とができます。

余談ですが、いて座の天の川の中心以外でも、USNO-A2.0には、ところどころ
に、奇妙なデータが載っていることがあります。

例えば、赤経17時、赤緯-20度付近も、そんな領域の1つです。USNO-A2.0を使っ
て、この辺りの星図を描くと、南北に伸びた、実在しない星の帯が表示されま
す。

  赤経17時、赤緯-20度付近のUSNO-A2.0のデータ
  http://vsnet.aerith.net/misao/report/general/usno-matching/1700-2000-j.html

P.S.
過去のMISAOプロジェクト・アナウンスメイルは
  http://vsnet.aerith.net/misao/index-j.html
で閲覧できます。

--
吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
comet@aerith.net
http://vsnet.aerith.net/index-j.html

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