Re: 1RXS J232953.9+062814 山岡さんところの学生の協力を得て、また松本君の協力を得て、元文献の解読が できました(中国語の文献です)。 スペクトルは水素欠乏型ではないようで、AM CVn 型の可能性は否定できそうです。 おそらく V485 Cen 型の史上2個めの天体と思われますが、非常に明るいために これからの詳細な観測が期待できます。いろいろな面で謎の多い V485 Cen型天体 の解明が飛躍的に進む可能性があります。 (背景事情の説明) 普通、水素の多い激変星では、最短軌道周期が存在します(これは伴星が低質量 星になって縮退が始まると、進化に伴って逆に半径が大きくなるため)。 一般には、この最短周期が1.3時間程度とされていて(しかし理論によってはも っと短い周期を提唱しているものもある)、WZ Sge starsやER UMa starsがそれ らの最短周期の天体ではないかと一般に考えられています。 これより周期の短い激変星も存在しますが、それらは大抵ヘリウム激変星で、 ヘリウム白色矮星を伴星に持つものです(AM CVn型)。ところが、1個だけ水素 が多い V485 Cen という天体があり、進化的位置が謎となっていました。 (この星が初めて紹介された時の、「観測が間違っているんじゃないの」的な国 際会議でのコメントが印象的でした) (ヘリウムが中程度に多いためという説がありますが、観測で確かめられている ものでもないようです)。特異な進化経路をたどっていたとすると、そのような 天体の数は少ないとも考えられるので、1RXS J232953.9+062814 のような同種の 明るい天体が発見されたことは、もしかするとこれらの天体はもっと多く存在す ることを示唆する可能性もあり、考え方を変えないといけないかも知れません。