observational bias and visual observations 非英語圏の天文ニュースに載っているとの情報をもらったのですが、「眼視観測 の精度の問題点」が(AAVSO ML以外にも)またまた話題になっているそうです。 それによると、眼視観測による食変光星の解析をすると、減光よりも増光の方が 一般的に速く、その著者の分析によれば「極小を過ぎたら観測を早く終了したい」 心理が働いているのではないかとのこと。そういう目で VSOLJ の食変光星の観測 記録を調べてみると、どうも同じ傾向があるようです(万国共通?)。 また、同じ著者によると予報時刻が間違っていても、その時刻に食を捉えてしま う観測者もいるとのことで、「予想」と「現実」では「予想」の方が心理的に優 先されるのではないかとの分析がなされていました。 また、赤色半規則・不規則変光星などでは、そういう予報に基づく先入観が入り にくいかも知れないものの、今度は個人差が大きくて精密な解析には耐えにくい とも書かれていました。 総じて、一部眼視観測の意味あるところ(特に突発現象)は残っているが、入門 者や教育向け(+見て楽しむ)以外には、客観的な観測の意義は薄いという論調 でした。このところのいくつかの情報源では、ほぼこのあたりの意見が大勢にな りつつあるようです。 また近着の JAAVSO に P Cyg の記事があったのですが、その昔ある1人の観測者 がハイペースでこの星の記録を残し、AAVSOの光度曲線上で見事な「減光」が記録 されているとの記事がありました。現象の信憑性はわからないそうですが、その 光度曲線で唯一明らかにみられる変動も信用してはいけないのであれば、少なく とも P Cyg の観測については「1世紀近い観測によっても、眼視観測で有意な 変動は検出できなかった」と言わざるを得ないもようです。(現代ではリアルタ イムで確認がなされ得るので、当時に比べると同じ手法でも信憑性の高いデータ を得やすくなっていると思われますが -> 逆に言えば眼視観測の場合リアルタイ ムで常時確認を取り合う体制が、信頼度を高める上で必須なのであろうと思われ ます。一人で観測をため込んで、後になって「こういう現象が起こっていました」 と言っても高い信頼度は得られない、という一つの典型例になりそうです)。