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V1159 Ori



V1159 Ori

920630
論文紹介:新しい矮新星 V1159 Ori

  "V1159 Ori: a dwarf nova with very short outburst cycle"
  Astron. Astrophys. 259, 198 (1992)
  F. J. Jablonski and D. Cieslinski

これは論文紹介というより観測の呼掛けであると考えていただいた方がより正確で
す。オリオン座にかなり明るい(極小光度でも15等クラス、極大光度では13.5等程
度ですが、これについてはもっと明るくなる可能性が高く後述)矮新星が発見され
ました。まだ性質がよくわかっていませんが、測光観測の結果の解析からは増光間
隔は4日(!)ぐらいではないかということで、しかも視線速度観測からは軌道周
期 0.05872日のSU UMa型らしいのです。

 さてこの星は、Wolfによって1906年に発見され、36.1906という名前が付けられ
ていました。Kippenhahnが1953年にAstron.Nachr.281,153にUG型でないかと提案
したのですが、無視されてしまいNSV02011(変光範囲13.3-14.2)という疑変光星
として登録されたにとどまりました。1984年にNatsvlishviliがIBVS No.2565に変
光範囲12.5-16.0等の変光確認を発表したに及んで正式な変光星として登録され、
V1159 Oriという名前が付きました。しかしオリオン星雲の近くに位置していたが
悲劇、最初のUG型ではないかという意見はすっかり忘れられて、星雲型変光星
(GCVSによればINS:型)と分類されてしまいました。

位置: 05h28m59.5s -033'53" (2000.0)
変光範囲: 12.5-16.0p (GCVS登録値), 13.56-15.19V (この論文)
色: 例えば一番暗い時で、U-B=-1.01 B-V=0.16 これはまさしく矮新星的です
高速測光: 短時間変動あり。軌道運動に由来するような変光は認められない
分光: バルマー、HeIの輝線がみられる

とまあ、こんなところで矮新星であることは間違いがないようです。測光点は少な
いのですが、明るい時期と暗い時期が半々ぐらい。これを周期解析して増光周期を
4日と求めていますが、これは実際に連続した光度曲線を作ってみないと本当かど
うかはわからないでしょう。もし本当ならば最も増光間隔の短い矮新星となります
が・・

 注目すべきは分光観測による視線速度観測から得られた軌道周期です。これは観
測結果を見ても(ちょっとばらつきが大きいのですが)本当のように見えます。得
られた周期は0.05872日と、period gapよりも短いところ、SU UMa型の領域に入っ
ています(しかも短い方だ)。輝線の視線速度変化と輝線幅から矮新星の軌道傾斜
と主星の質量を推定する方法を適用すると、M1=0.8太陽質量、軌道傾斜=40oという
結果が得られています。

 これから想像すると、この星はSU UMa型矮新星の条件をすべて満たしているよう
です。増光頻度だけは少し特異なようですが、多分スーパーアウトバーストが存在
すると思われます。他のSU UMa型から類推すると、その極大光度は12等ぐらいでし
ょうか。Natsvlishviliの極大値はそれを捉えたものかも知れません。

 ということで、最近には珍しく明るく、増光が確実に期待される(HV Virをはじ
め、ほんとSU UMa候補には泣かされますね)SU UMa型矮新星候補の発見です。もう
少しで明け方の空に観測が可能となりますので、ぜひともプログラムスターに入れ
てみてください。MEI/NEKOさんよろしく(何が??)