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V854 Cen
V854 Cen
「変光星」1989.06
・全天で3番目に明るいR CrB型星 NSV06708 (MNRAS 238,1p,1989)
1986年、McNaughtとDawesはNSV06708が8等にも及ぶ大きな変光を示すことを発見
した(IAUC4233)。当初より赤色変光星でないことが指摘されていた。Wenzelと
Hoffmeisterはこの星がCD-39021と同一であろうと報告した(IAUC4241)が、
McNaughtはNSV06708はCD-39021ではなく、その33"北にある星であろうとした
(IAUC4245)。以上の経過はかつて「変光星速報」に紹介されているので記憶され
ている方も多いであろう。
その後の観測から、この星は急速な減光とゆっくりした復光という典型的なR CrB
型の変光を示すことが明かとなった。また極大光度でも小さい変光をしていること
が報告されている(IAUC4420)。また強い赤外過剰を伴っていることが明かとなった。
1988年9月の急減光の際の赤外測光では長波長ほど変化が小さく、L光度ではほとん
ど変化がない。U-Jは星本体からの光度を示し、L光度はダストからの輻射を示して
いると考えられ、R CrB型の挙動に一致する。
McNaughtによる1913-21,1933-52のHarvard plateの調査の結果、1917年中ごろに
はB=10であり、1919-37の間は時々11-13等で記録されたが、大部分は13等以下であ
った。この暗い状態は1864-1874ごろのR CrB自身の変光に似ている。またHenry
Draperカタログにも記載されていない。
1988年9月14-19日、SAAOの1.9m望遠鏡にてスペクトル観測が行われた。9/14の観
測(B=11.5)ではC2,CaIIの吸収線が見られる。特徴的なのは他のR CrB型にはあまり
見られないバルマー線が見られることである。他のR CrB型星よりは水素欠乏の程
度が低いものと思われる。9/17,9/19(B=14.5)の観測では連続光強度の低下と輝線
の発達が著明であり、減光中のR CrB型のスペクトルである。
水素含有量や最近の活発な活動からみて、この星はおそらく最後の水素外層をは
ぎとばしつつある状態であると思われる。
「変光星」1990.03
・V854 Cen(=NSV6708) (Lawson and Cottrell, MNRAS 240,689)
−891101−
このRCB型について、極大時・減光時を含む多色測光(1988年)が行われた。
1)極大時の変光
極大光度の期間の観測は70日程度で、1周期をカバーしていないが、変光が認め
られ、その周期は110日程度と思われる。赤外観測と併せて、極大はJD 2447280,
2447390にみられる。この値は通常のRCB型の40-65日に比べて長いが、他の星でも
時に長い周期を示したり、周期の大きな変動を示したりすることもある。(注:
日変研のデータではすでに発表されているように通常のRCB領域の脈動周期が得ら
れている) Kilkenny and Marang はこの星は深い減光の頻度が高いことから、通
常のRCB型より脈動周期は短いだろうと推測しているが、これは確かめられなかった。
変光範囲はVで0.15等程度。
2)減光
減光の始まりは脈動の極大の10日後であった。RY Sgrにおいては減光の始まりは
脈動の極大付近に起こり、R CrBの場合は極大または極小に起こるらしいと言われ
ている。脈動がガスの放出に関わっていると思われるので、脈動の位相と減光の始
まりの関係を調べることは重要である。
V=7.1からV=14に減光するのに要した期間は25日であった。減光が進むにつれて
赤くなったが、多色測光の結果星間物質による赤化のパターンに似ていることがわ
かった。
・V854 Cen(=NSV06708) の変光周期
NHKのメンバーによる1986-1989のデータ(ほとんどが平常光度時)を周期解
析してみた。得られた結果は図の通りで、明確な周期性を示している。となりあう
いくつかのピークはいわゆる one year alias であり、可視期間が短い星なので避
けられない。しかし最も確からしい周期は R CrB のそれに非常に近く、この星が
極大光度において R CrB 型特有の脈動を示していることはほぼ間違いないと思わ
れる。