GRB 010222の観測の実際


ここでは京都大学での観測の実際を紹介します
(GRB 030329の画像も参照)


16:23:30 BeppoSAXがGRB検出
19:36:47 位置情報を添えてGCNに最初の通報
(なお最初の通報は興奮のあまり? 名前が間違っています error 5')
→日本時間は夜。天体が1時間弱後に地平線上に出ること
 を確認
・屋上望遠鏡(25cm,30cm)は通常の観測中
 30cmを向けることに決定
19:57:50 日本語での観測呼び掛け
20:20頃 高度 7゜で観測開始。視野はまだ比叡山麓(;_;)
(以下の画像はすべて30秒積分.実際の測定にはずっと多くの枚数の 画像を使います)

(ようやく空が見えてきた画像)
20:36:03 星が写り始める
20:39:13 BeppoSAX team位置改訂(error 2.5')
20:48:59 Hendenによる光学対応天体の通報
21:16:03 屋上望遠鏡の視野にGRBを収めた

(GRB 010222が視野に入った.しかし高度が低くまだはっきり受からない)
21:16:03 屋上望遠鏡の視野にGRBを収めた
22:27:25 死角に入る。いったん中断
29:12:44 観測再開

(高度が上がった画像.これらの画像から検出に成功!)


(処理の結果最終的に得られた画像)


(京都の点を紫でプロットした光度曲線 Holland's page)


GRB 010222の検出から学ぶこと


常時観測の重要性

全国的にも天気は良かった。しかも日本時間夕方に通報が入る。 しかし、国内で他に公式に報告された観測例はない。

→京都チームの成功は、当日通常の観測を行っていたことが大きい。
→いかに優秀な機材を備えていても、眠らせていてはいけない!

→ぜひ VSNET Collaboration に参加して
 日常的な観測経験を貯えよう!

観測補助情報の重要性


京都大学での観測の流れ図


GRB alert (GCN, vsnet-grb)
(現在は e-mail を利用)
 
    ↓
 
可視範囲のチェック(Xephem等)
 
    ↓
 
他の天体の観測中の望遠鏡を目標に
 
    ↓
 
連続撮像でデータを取得 (30秒で1フレーム)
(たとえばWZ Sge観測ガイド参照)
 
    ↓         ↓
 
オンサイトでの画像照合  九州大学に即時転送(山岡)
 
    ↓         ↓
 
位置が確定すれば測光  DSS,2MASS等との詳細照合
            精測位置測定(astrometry)
 
    ↓
 
GCN, vsnet-grb 等への報告、フィードバック

測光(photometry)は、天体が画像を目でみて確認できるぐらいに明瞭に受かって いれば、まずは既存の星表の光度(できればヒッパルコス星表の光度がよい) を参照して通常の測光を行って暫定値を出してください。

なお、既知変光星や小惑星が紛れている可能性は十分ありますので、 もし観測者で判断できましたら(参照) それらの可能性をチェックしてください。もし判断できない場合やチェック を行っていない場合は、報告にはその旨書き添えていただくとよいと 思います。チェックの経験のない場合は、チェック方法を調べるだけで 時間がかかりますので、特に GRB のように急激に変化する天体の場合 迅速な通報の方を優先してください。

15等なのか、あるいは18等なのか、 さらにあるいはGRB 030329のように 12等なのか、によってその後の観測方法の対応が違ってきます。対応天体に間違 いなさそうな天体があれば、暫定光度をなるべく即座に発表してください。

正確な光度は、後に発表される周辺の星の正確な光度(field photometryという) をもとに決定します。普段から変光星などCCD精密測光の経験を積まれている 方でなければ、この段階の測定は専門家に依頼する方がよいと思います (必要でしたら vsnet-adm@kusastro.kyoto-u.ac.jp にご相談ください。 なお画像はこのアドレスには直接には送らないでください)

画像を目でみて確認できないぐらい暗い場合でも、詳しい測定をすれば 有意に検出できる場合もあります。そのため、どのような画像でも消さずに 残しておいてください。バースト前後の時間帯に偶然同方向を撮影された 画像/写真/ビデオ等も貴重な資料になる場合があります。もし GRB 情報 を受けられましたら、それらの情報の保全を行ってください。 (詳しい測定や写真等の調査のご相談は上記のアドレスでも承ります)

なお、それなりに明るい空(肉眼で3-4等星ぐらいしか見えない空)でも、 20-30cm程度の望遠鏡とCCDカメラで、十分な枚数(100枚以上、可能な 限り多く。もちろん枚数ではなく全露出時間が重要です)の画像があれ ば、条件にもよりますが詳しい測定をすればだいたい19-20等が検出で きます(条件が良ければもっと暗い天体が受かることもあります)。 ぜひあきらめずに頑張ってください。

バーストの発生状況によっては、最初に通報される位置精度が十分に よくなく、1つの画像で誤差範囲(エラーボックスあるいは エラーサークル: error box, error circle などの用語で呼ばれ ます)をカバーしきれないこともあります。その場合も部分的に カバーした画像でも有効なことがあります。また状況によっては、 望遠鏡を動かして、何枚かの画像で誤差範囲をカバーする (モザイク画像)ことも考えられます。誤差範囲は逐次改訂されて ゆきますし、対応天体(afterglow)が発見されて位置が確定すること もありますので、情報を常にキャッチしながら、臨機応変な対応 を行うことが重要です。


(モザイク観測の例: GRB 020812 京都大学大宇陀観測所。緑の枠が HETE-2 が最終的に決定した誤差範囲。1,2,3 が大宇陀観測所で逐次撮られた位置。 中心位置がずれているのは、HETE-2 チームによる位置改訂が何度か行われ たため、観測方向を修正したため。作図: 山岡)

GRB アラート受信方法


(from the GCN page)

GRB COORDINATES DISTRIBUTION METHODS
TIME DELAYMETHOD/MEDIACOMMENTS
0.3 secDedicated phoneContinuous phone/modem connecti n.
0.1-2.0 secSocketFast & suited for automated instrume ts.
5-30 secE-mailTo any network address.
30-90 secDialed phoneSlower but much cheaper than Ded cated.
60-180 secPagerRA,Dec,UT,Intensity displayed on the p ger.
60-180 secShort PagerRA & Dec displayed on the pager. /th>
5-180 secSubject-onlyRA & Dec displayed in the Subjec -line.
5-180 secSubjHHMM-onlyRA, Dec, Time, & Intensity disp ayed in the Subject-line in RA=HH:MM:SS format.

このうち、ROTSEで使われたのはsocketによる方法。現在13カ所がsocketによって 受け取っている。e-mail は 91アドレスが現在登録。Dedicated phone(夜間モデム をつなぎっぱなし、USA内のみ)は現在登録なし。(2001年11月時点)

いずれにしても初期光度変化の観測のためには、望遠鏡を自動制御すること、す なわちコンピュータに自動的に座標が伝達されることが欠かせないので、 固定アドレスを持つ常時接続ネットワーク経由の場合、socketによる伝達 (あるいはスピード的には次善の e-mail)が最も適しているだろう。

具体的な受信手順については,GRBのページの鳥居さん によるまとめをごらんください.


GRB HETE-2アラートの解読法 (e-mail)


(例はGRB030328, GRB030329発見前後です)

(vsnet-grb 873)

TITLE:          GCN/HETE BURST POSITION NOTICE
NOTICE_DATE:    Fri 28 Mar 03 11:21:03 UT
NOTICE_TYPE:    HETE S/C_Alert
TRIGGER_NUM:    2650,   Seq_Num: 1 ここに注目
GRB_DATE:       12726 TJD;    87 DOY;   03/03/28
GRB_TIME:       40858.35 SOD {11:20:58.35} UT
TRIGGER_SOURCE: Trigger on the 6-120 keV band.
GAMMA_RATE:     441  [cnts/s]  on a 1.300 [sec] timescale
SC_LONG:        204 [deg East]
SUN_POSTN:        6.77d {+00h 27m 05s}   +2.93d {+02d 55' 32"}
MOON_POSTN:     322.33d {+21h 29m 20s}  -20.11d {-20d 06' 30"}
MOON_ILLUM:     17 [%]
COMMENTS:       No s/c ACS pointing info available yet.
COMMENTS:       Probable GRB.
この時点では,GRBの発生を伝えるもの.HETE-2 の場合は,Seq_Num = 1 の時点では GRB の位置情報はありません (INTEGRALの場合は違います). 時刻 (GRB_TIME) のみをチェックして,現在起きたバーストの可能性が あるか見ます. HETE-2 の場合は反太陽方向を観測しているため,日本 時間の夜間であれば続報に備えて待機します. CCDを冷やしていない人 はこの段階で電源を入れましょう.

(vsnet-grb 874)

TITLE:          GCN/HETE BURST POSITION NOTICE
NOTICE_DATE:    Fri 28 Mar 03 12:14:13 UT
NOTICE_TYPE:    HETE Ground Analysis ここに注目
TRIGGER_NUM:    2650,   Seq_Num: 3 ここに注目
GRB_DATE:       12726 TJD;    87 DOY;   03/03/28
GRB_TIME:       40858.34 SOD {11:20:58.34} UT
TRIGGER_SOURCE: Trigger on the 6-120 keV band.
GAMMA_RATE:     0  [cnts/s]  on a 0.000 [sec] timescale
SC_-Z_RA:         0 [deg]
SC_-Z_DEC:        0 [deg]
SC_LONG:        204 [deg East]
SXC_CNTR_RA:    182.692d {+12h 10m 46s} (J2000), ここに注目
                182.734d {+12h 10m 56s} (current),
                182.050d {+12h 08m 12s} (1950)
SXC_CNTR_DEC:    -9.375d {-09d 22' 29"} (J2000), ここに注目
                 -9.393d {-09d 23' 34"} (current),
                 -9.097d {-09d 05' 48"} (1950)
SXC_MAX_SIZE:   4.00 [arcmin] diameter ここに注目
SXC_LOC_SN:     6 sig/noise (pt src in image)
SUN_POSTN:        6.77d {+00h 27m 05s}   +2.93d {+02d 55' 32"}
SUN_DIST:       172.39 [deg]
MOON_POSTN:     322.33d {+21h 29m 20s}  -20.11d {-20d 06' 30"}
MOON_DIST:      130.50 [deg]
MOON_ILLUM:     17 [%]
GAL_COORDS:     286.43,52.19 [deg] galactic lon,lat of the burst
ECL_COORDS:     186.21,-7.53 [deg] ecliptic lon,lat of the burst
COMMENTS:       Definite GRB. ここに注目
COMMENTS:       SXC error box is circular; not rectangular.
COMMENTS:       Burst_Validity flag is true.
COMMENTS:       SXC data refined since S/C_Last Notice.
地上解析によって位置が決められました(位置は SXC_CNTR_RA, SXC_CNTR_DEC で, 普通の星図を使われている方は J2000 の座標をみます). この天体は GRB 030328 と呼ばれることになったものです. 該当位置が見える場所にあれば 即望遠鏡を向けましょう! 誤差範囲は SXC_MAX_SIZE に記されていて,この場合 は直径が角度の 4' です.(ただし誤差範囲は統計的なもので,この外側 にある可能性も少し残りますので,実際には少し広めに撮像しておくと よいでしょう)

HETE-2 の場合,Seq_Num が 2以上のものは 重要な情報を含んでいますので,必ず読みましょう. GRB ではなかった(宇宙線等による誤情報)場合には,COMMENTS の欄に記載 されます.この場合は「確実なGRB」と記載されています.

(vsnet-grb 875)

TITLE:          GCN/HETE BURST POSITION NOTICE
NOTICE_DATE:    Fri 28 Mar 03 13:21:46 UT
NOTICE_TYPE:    HETE Ground Analysis
TRIGGER_NUM:    2650,   Seq_Num: 4 ここに注目
GRB_DATE:       12726 TJD;    87 DOY;   03/03/28
GRB_TIME:       40858.34 SOD {11:20:58.34} UT
TRIGGER_SOURCE: Trigger on the 6-120 keV band.
GAMMA_RATE:     0  [cnts/s]  on a 0.000 [sec] timescale
SC_-Z_RA:         0 [deg]
SC_-Z_DEC:        0 [deg]
SC_LONG:        204 [deg East]
WXM_CNTR_RA:    182.719d {+12h 10m 53s} (J2000), ここに注目
                182.761d {+12h 11m 03s} (current),
                182.077d {+12h 08m 18s} (1950)
WXM_CNTR_DEC:    -9.392d {-09d 23' 30"} (J2000), ここに注目
                 -9.410d {-09d 24' 35"} (current),
                 -9.114d {-09d 06' 49"} (1950)
WXM_MAX_SIZE:   9.18 [arcmin] diameter
WXM_LOC_SN:     20 sig/noise (pt src in image)
WXM_IMAGE_SN:   X= 20.3 Y= 13.8 [sig/noise]
WXM_LC_SN:      X= 25.5 Y= 25.5 [sig/noise]
SXC_CNTR_RA:    182.711d {+12h 10m 51s} (J2000),
                182.752d {+12h 11m 01s} (current),
                182.068d {+12h 08m 16s} (1950)
SXC_CNTR_DEC:    -9.352d {-09d 21' 05"} (J2000),
                 -9.370d {-09d 22' 10"} (current),
                 -9.073d {-09d 04' 23"} (1950)
SXC_MAX_SIZE:   1.73 [arcmin] diameter ここに注目
SXC_LOC_SN:     6 sig/noise (pt src in image)
SUN_POSTN:        6.77d {+00h 27m 05s}   +2.93d {+02d 55' 32"}
SUN_DIST:       172.42 [deg]
MOON_POSTN:     322.33d {+21h 29m 20s}  -20.11d {-20d 06' 30"}
MOON_DIST:      130.50 [deg]
MOON_ILLUM:     17 [%]
GAL_COORDS:     286.45,52.22 [deg] galactic lon,lat of the burst
ECL_COORDS:     186.22,-7.50 [deg] ecliptic lon,lat of the burst
COMMENTS:       Definite GRB.
COMMENTS:       WXM error box is circular; not rectangular.
COMMENTS:       SXC error box is circular; not rectangular.
COMMENTS:       The WXM & SXC positions are consistant; overlapping error boxes.
COMMENTS:       Burst_Validity flag is true.
COMMENTS:       WXM data refined since S/C_Last Notice.
COMMENTS:       SXC data refined since S/C_Last Notice.
これは位置改訂を知らせるものです.誤差範囲が 1'.73 と小さくなりました.

(vsnet-grb 876)

TITLE:          GCN/HETE BURST POSITION NOTICE
NOTICE_DATE:    Sat 29 Mar 03 03:35:07 UT
NOTICE_TYPE:    HETE S/C_Alert
TRIGGER_NUM:    2651,   Seq_Num: 1 ここに注目
GRB_DATE:       12727 TJD;    88 DOY;   03/03/29
GRB_TIME:       12703.03 SOD {03:31:43.03} UT
TRIGGER_SOURCE: Trigger on the 25-400 keV band.
WXM_SIG/NOISE:  0.1 sig/noise  on a 9.440 [sec] timescale
SC_-Z_RA:       187 [deg]
SC_-Z_DEC:       -2 [deg]
SC_LONG:        348 [deg East]
SUN_POSTN:        7.38d {+00h 29m 32s}   +3.19d {+03d 11' 20"}
MOON_POSTN:     330.77d {+22h 03m 05s}  -17.40d {-17d 23' 50"}
MOON_ILLUM:     12 [%]
COMMENTS:       Probable GRB.
これは別のバースト候補です(TRIGGER_NUM が違う). 日本時間の昼で, Seq_Num = 1 なのでとりあえず静観.この例のように続報がない 場合もあります.それらはおそらくノイズです.

(vsnet-grb 877)

TITLE:          GCN/HETE BURST POSITION NOTICE
NOTICE_DATE:    Sat 29 Mar 03 11:38:41 UT
NOTICE_TYPE:    HETE S/C_Alert
TRIGGER_NUM:    2652,   Seq_Num: 1 ここに注目
GRB_DATE:       12727 TJD;    88 DOY;   03/03/29
GRB_TIME:       41834.67 SOD {11:37:14.67} UT
TRIGGER_SOURCE: Trigger on the 6-120 keV band.
GAMMA_RATE:     0  [cnts/s]  on a 0.000 [sec] timescale
SC_LONG:        242 [deg East]
SUN_POSTN:        7.69d {+00h 30m 46s}   +3.32d {+03d 19' 13"}
MOON_POSTN:     334.86d {+22h 19m 27s}  -15.92d {-15d 54' 58"}
MOON_ILLUM:     10 [%]
COMMENTS:       No s/c ACS pointing info available yet.
COMMENTS:       Definitely not a GRB. ここに注目
「これは GRBとは違う」と書かれています.しかしこれは GRB 030329 でした.

(vsnet-grb 878)

TITLE:          GCN/HETE BURST POSITION NOTICE
NOTICE_DATE:    Sat 29 Mar 03 12:50:24 UT
NOTICE_TYPE:    HETE Ground Analysis
TRIGGER_NUM:    2652,   Seq_Num: 3 ここに注目
GRB_DATE:       12727 TJD;    88 DOY;   03/03/29
GRB_TIME:       41834.67 SOD {11:37:14.67} UT
TRIGGER_SOURCE: Trigger on the 6-120 keV band.
GAMMA_RATE:     0  [cnts/s]  on a 0.000 [sec] timescale
SC_-Z_RA:         0 [deg]
SC_-Z_DEC:        0 [deg]
SC_LONG:        242 [deg East]
SXC_CNTR_RA:    161.203d {+10h 44m 49s} (J2000), ここに注目
                161.247d {+10h 44m 59s} (current),
                160.526d {+10h 42m 06s} (1950)
SXC_CNTR_DEC:   +21.479d {+21d 28' 44"} (J2000), ここに注目
                +21.462d {+21d 27' 43"} (current),
                +21.742d {+21d 44' 31"} (1950)
SXC_MAX_SIZE:   4.00 [arcmin] diameter ここに注目
SXC_LOC_SN:     20 sig/noise (pt src in image)
SUN_POSTN:        7.69d {+00h 30m 46s}   +3.32d {+03d 19' 13"}
SUN_DIST:       144.16 [deg]
MOON_POSTN:     334.86d {+22h 19m 27s}  -15.92d {-15d 54' 58"}
MOON_DIST:      171.80 [deg]
MOON_ILLUM:     10 [%]
GAL_COORDS:     217.07,60.68 [deg] galactic lon,lat of the burst
ECL_COORDS:     154.47,12.51 [deg] ecliptic lon,lat of the burst
COMMENTS:       Definite GRB. ここに注目
COMMENTS:       SXC error box is circular; not rectangular.
COMMENTS:       Burst_Validity flag is true.
COMMENTS:       SXC data refined since S/C_Last Notice.
これは GRB 030329 の発見を伝えるものです(ちなみにこのメールは15秒後に 我々に届きました).なお Seq_Num が 1 でないものが最初に来る こともあります.位置も時刻もよいので,即観測すべき条件です.

(vsnet-grb 879)

TITLE:          GCN/INTEGRAL NOTICE ここに注目
NOTICE_DATE:    Mon 31 Mar 03 02:45:56 UT
NOTICE_TYPE:    INTEGRAL Wakeup
TRIGGER_NUM:    484,   Sub_Num: 0
GRB_RA:         266.5700d {+17h 46m 17s} (J2000), ここに注目
                266.6229d {+17h 46m 29s} (current),
                265.7543d {+17h 43m 01s} (1950)
GRB_DEC:        -32.2394d {-32d 14' 21"} (J2000), ここに注目
                -32.2405d {-32d 14' 25"} (current),
                -32.2208d {-32d 13' 14"} (1950)
GRB_ERROR:      4.32 [arcmin, radius, statistical only] ここに注目
GRB_INTEN:      10.49 [sigma]
GRB_TIME:       9492.73 SOD {02:38:12.73} UT
GRB_DATE:       12729 TJD;    90 DOY;   03/03/31
SC_RA:          266.95 [deg] (J2000)
SC_DEC:         -27.85 [deg] (J2000)
SUN_POSTN:        9.17d {+00h 36m 41s}   +3.95d {+03d 57' 09"}
SUN_DIST:       102.72 [deg]
MOON_POSTN:     353.59d {+23h 34m 23s}   -7.95d {-07d 56' 55"}
MOON_DIST:       83.22 [deg]
GAL_COORDS:     357.25, -1.84 [deg] galactic lon,lat of the burst
ECL_COORDS:     267.06, -8.84 [deg] ecliptic lon,lat of the burst
COMMENTS:       INTEGRAL GRB Coordinates.  
こちらは INTEGRAL衛星からの速報.Seq_Num = 0 ですが位置情報が入って います.一見 GRB のようにみえて,一時期 GRB 030331 という名前も 使われましたが,実は X線新星 IGR J17464-3213 を GRB と判断してしまったものです(X線新星は通常銀河系内の ブラックホールまたは中性子星連星で,これ自身も興味深い観測対象 ではあります.V4641 Sgrの例, VSOLJニュースの日本語解説). 後に GCN Circular で訂正が 出されました.このように GRBではないX線天体がGRBとして通報される 場合もまれにあり,訂正が別にでることもありますので注意が必要です. (かに星雲を検出した例, 訂正, 説明 HETE-2衛星からみて,かに星雲が地球の背後から出てきたものをバースト的 なものと誤認した模様です)

(vsnet-grb 922)

TITLE:             GCN/IPN POSITION NOTICE ここに注目
NOTICE_DATE:       Sat 26 Apr 03 17:34:31 UT
NOTICE_TYPE:       IPN Single Box
IPN_NUMBER:        643
GRB_DATE:          12754 TJD;   115 DOY;   03/04/25
GRB_TIME:          56911.00 SOD {15:48:31.00} UT
GRB_IPN_RA:        233.2969d {+15h 33m 11s} (J2000),
                   233.3320d {+15h 33m 20s} (current),
                   232.7666d {+15h 31m 04s} (1950)
GRB_IPN_DEC:       +26.2917d {+26d 17' 30"} (J2000),
                   +26.2807d {+26d 16' 51"} (current),
                   +26.4591d {+26d 27' 33"} (1950)
GRB_ERROR1_RA1:    232.7065d {+15h 30m 50s} (J2000)
GRB_ERROR1_DEC1:    25.3835d {+25d 23' 01"} (J2000)
GRB_ERROR1_RA2:    231.4032d {+15h 25m 37s} (J2000)
GRB_ERROR1_DEC2:    23.5570d {+23d 33' 25"} (J2000)
GRB_ERROR1_RA3:    236.4667d {+15h 45m 52s} (J2000)
GRB_ERROR1_DEC3:    30.7937d {+30d 47' 37"} (J2000)
GRB_ERROR1_RA4:    233.9695d {+15h 35m 53s} (J2000)
GRB_ERROR1_DEC4:    27.3151d {+27d 18' 54"} (J2000)
GRB_ERROR:         190.35 [arcmin radius of circumscribing circle, 3 sigma]
GRB_BOX_AREA:      2280 [sq.arcmin]
GRB_PEAK_FLUX:     1.6e-06 [erg/cm2/sec in 25-100 keV] in a 0.50 sec interval
GRB_FLUENCE:       5.9e-05 [erg/cm2 in 25-100 keV]
GRB_DURATION:      500.0 [sec]
SUN_POSTN:          32.75d {+02h 10m 60s}  +13.20d {+13d 11' 57"}
SUN_DIST:          135.74 [deg]
MOON_POSTN:        334.31d {+22h 17m 15s}  -16.29d {-16d 17' 26"}
MOON_DIST:         106.75 [deg]
GAL_COORDS:        41.06,54.03 [deg] galactic lon,lat of the burst
ECL_COORDS:        222.05,43.81 [deg] ecliptic lon,lat of the burst
COMMENTS:          IPN triangulation localization.  
COMMENTS:          This is a preliminary, 3 sigma error box.  
COMMENTS:          GCN message is being issued.  
これは IPN (Interplanetary Network) の場合の例です.IPN では,太陽系 空間を飛んでいる複数の衛星がガンマ線バーストを捉えた場合,その到達 時間差から三角測量(triangulation)の要領で方向を決めるものです. BATSEやHETE-2のような方向を検出できる衛星が運用される前はこの方法が 基本でした.

ただし,衛星からの情報を受けて地上で解析するため,一般には検出から かなり時間がかかります.この情報を受けられた場合には,まず発生時刻 (GRB_DATE, GRB_TIME) を確認されるとよいでしょう.

さらに,衛星が地球軌道平面に多いため,位置が一意に決まりにくい ことが多いです.たとえば2個の衛星が捉えた場合には,ある大円の円周上 までしか位置を絞ることができません.地球軌道面から離れた衛星が 存在する場合以外は,IPN 単独では位置が決めにくく,現在では 多くの場合他の情報と組み合わせる (たとえば HETE-2 の誤差範囲と IPN の誤差範囲を組み合わせてより範囲を絞るなど) ことで, 位置情報が活用される場合があります.この例の場合もそうですが, 同時に GCN Circular が発行されることが多いので,詳しい情報を 得るには,そちらを読むのがよいでしょう.

HETE-2 の観測領域が銀河中心方向に近い場合,X線源(GRBではない)が多数 あるため,特にX線バースト (XRB) 現象が通報される場合があります. 既知のX線天体のリストを持っていれば照合可能ですが, (低質量X線連星 = LMXBのリスト.完全では ありません), 銀河中心方向に出た場合は,もし本物のGRBであってもそもそも大きな吸収を 受けて可視光で観測できないことが多いと思われますので,ちょっと避けて おいてもよいでしょう.

なお X線フラッシュ (XRF) と呼ばれる現象があり ますが,これは XRB とは異なります(むしろX線を主に出しているGRBと 考えられています).時々情報が混同されて解説されているケースがあり ますので,注意が必要です.XRFはGRB同様に観測すればよい種類の天体です, というよりも,通常のGRB以上に正体が判明していないため,観測意義は非常に 高いです.

なお,SGR (soft gamma-ray repeater), AXP (anomalous X-ray pulsar) と呼ばれる天体も同様の通報の対象になることがあります. これらは(主に)銀河系内の天体ですが,非常に強い磁場を持つ中性子星 で起きる現象と考えられています.現象的にも GRB と類似した短時間 のバースト的現象を起こしますので(ただ GRB とは違って同じ天体で 繰り返し起きます),可視光の同時観測があれば貴重な記録になるかも 知れません.

参照
AXP 1E2259+586
日本のアマチュア(山本稔さん)がAXPバーストとほぼ同時に観測した例

AXP 1E2259+586 観測の呼び掛け

SGR 1900+14
1998年10月27日,巨大なガンマ線フレアが発生しました.

SGR
NOAOのSGRのページ


(秘)山岡さんに照合のための画像を送る際のヒント



(極秘)GRB速報メールを早く受けるためのヒント


メールが送信される場合,メールアドレスから実際に送信されるマシンの アドレス(IPアドレス)への変換が行われます.この変換は送信マシン上 のキャッシュに該当アドレスがある状態では瞬時に行われますが,そうで ない場合は,他のマシンやネットワークに問い合わせを出すために, 余分の時間の遅れが発生します.すなわち,送信マシン上のキャッシュに 該当アドレスがある状態を維持すれば,より早くメールを受けることが できることになります.読まないと思っていても普段からVSNET mailsを 常時受けておけば,いざという時に早く受信できる可能性が高まります. いや,あくまで原理の説明ですが...


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